虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰

 バタバタとしたような、そうでないような……わたし付きという不思議な状況での、セディーの婚約の申し込みをした週末を終え――――

 週明け。今日からまた授業です。

 放課後が楽しみなような、どういう顔をしてセルビア嬢に会えばいいのかわからないような、そわそわしたとした落ち着かない気分で・・・

 わたしが婚約したワケでもないのに・・・なんかこう、気恥ずかしい! 

 そんな風に授業を受けて、放課後。

「よう、ハウウェル。今日はどうすんだ?」
「久々に走るか、それとも打ち合うか?」

 テッドとレザンの二人と合流。

「え~と、乗馬」
「ふむ。いいだろう」

 と、馬場へ向かった。

「な~んか今日、そわそわしてね? ハウウェル」
「アルレ先輩となにかあったのか?」
「え? ああ、違う違う。ちょっと、プライベートでね……」

 いやぁ、セディーとセルビア嬢のことで頭一杯で、アルレ嬢のことをすっかり忘れていたよ。レザンと行動しているお陰か、ここしばらくはあの人の接触無かったし。

 こういう気が緩んでいるときが一番危ないんだよね。学園では、もっと気を引き締めなきゃ。

「なんだ? いいことでもあったのか?」
「うん。実は……」
「ネイサン様!」

 呼ばれた声の方を向くと、にこやかな顔で手を振るセルビア嬢。

「っ!? なっ、ハウウェルおまっ、いつの間に副部長に名前で呼ばれるような仲になったんだこの野郎! ついこないだまではハウウェルだったじゃねーか!」
「ちょっ、テッド!」

 ぐわっとテッドに詰め寄られる。

「さあ吐けハウウェルっ! 今すぐ! 一体全体、なにがあって美人さんな副部長に名前で呼ばれる経緯になったのかっ、観念して洗いざらい吐けっ!?!?」
「落ち着けテッド、近いから。あと、肩痛い」
「お前が吐くまで問い詰めるからなっ!?」
「あら、どうしたのですか? メルンさん」
「! 副部長っ!?」
「ぁ、セルビア嬢……」
「ふふっ、ケイトでいいですよ? ネイサン様」

 セルビア嬢がそう言った瞬間、くわっとテッドの目が見開いた。『どういうことか説明しろこの野郎』と、声に出さずにその口が動く。

「先日は、可愛らしいぬいぐるみをありがとうございました。ふわふわで触り心地が良くて、凄く喜んでいて、寝るときには抱っこして寝ているんですよ?」

 どうやら、セディーと二人で選んだひよこのぬいぐるみは気に入ってもらえたらしい。よかったと思った瞬間、テッドに掴まれたままの肩に、ぎちぎちと力が入る。なにげに握力強いな。

「それはよかったです。・・・と、失礼。いい加減放せってば!」

 ぎちぎちと肩を掴む手を振り払う。

「説明!」
「もしかして、取り込み中でしたか?」
「いえ、なんでもありません! お気になさらず。それより、ハウウェルに用ですか?」

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