虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 うちに着くと、

「婚約は、受けてもらえました」

 待っていたお祖父様とおばあ様にそう報告。

「そうか。よかったな、セディー」
「はい」
「それで、どんなお嬢さんなのかしら?」

 なぜか、セディーではなくわたしへ聞くおばあ様。

「? セルビア嬢は、とてもいい方ですよ? 凄くしっかりしている方ですし。一つ上の先輩で、乗馬クラブの副部長を務めていて、面倒見もいいですね」

 まぁ、ブラコンだけど。

「そう、それで? セディーのことを好きそう?」
「え?」
「セディーは教えてくれないのよ。どうなの?」

 わくわくした顔で尋ねるおばあ様に、思わずフリーズしてしまう。

 ・・・セルビア嬢が、セディーのことを好き?

 今日、セディーがセルビア嬢に婚約を申し込みに行って、受けてもらえた。

 二人で話して決めたというけど・・・その割に、二人の様子はいつも通りだった。

 セルビア嬢が頬を染めてうっとりしている顔や、慈愛に満ちた微笑みを浮かべているのは見たけど、それは全部リヒャルト君へと向けられていた顔だった。

 セルビア嬢がセディーへ向ける顔は、いつもと同じ冷静な顔で・・・

 ああいや、わたしとリヒャルト君が仲良くしている姿が尊いだとかセルビア嬢が言って、セディーがそれに同意したときにはとても嬉しそうな顔をしていたけど・・・

 セルビア嬢が、セディーを好き・・・?

「・・・」

 でも、婚約は受けてもらえて・・・多分、嫌いではない、よね?

 セディーが自分から、セルビア嬢がいいと言って選んだ人だけど・・・

「あら? 違ったの? 残念ねぇ」
「ふふっ、僕達の場合は、惚れた腫れたの関係というよりは、信頼関係ですからねぇ。色っぽい話はまだまだと言ったところでしょうか?」

 ちょっと残念そうなおばあ様に、セディーが答える。

「そうなの? それはそれで、これからが楽しみねぇ」
「では、ケイトさんを宜しくお願いしますね?」
「任せてちょうだい」
「あ、そうだ。ケイトさんと婚約するに当たって、決めて来たことがあるんです」
「なにを決めて来たの?」
「ケイトさんの好きなときに里帰りをしていい、と。そう約束しました」

 う~ん・・・セルビア嬢はリヒャルト君ラブですからねぇ。さもありなんという気がする。

「なに? それはどうかと思うぞ」

 セディーがしたという約束に、渋い顔をするお祖父様。

「まぁ、婚家にずっといるのも気を遣うものね。セルビア家とは、そんなに距離が離れているワケでもないから。いいんじゃないかしら?」
「おばあ様なら、そう言ってくれると思ってました」
「しかしだな、家に帰っても奥さんがいないと寂しい思いをするぞ?」
「あら? わたしが里帰りをしている間、寂しかったの? ヒューイ」
「い、一般的な意見だ! それに、しょっちゅう里帰りをされると、不仲だと疑われることもある」

 揶揄うようなおばあ様に、顔を赤くするお祖父様。仲が良いですねぇ。

「そういうときには、迎えに行けばいいのよ」
「むぅ・・・」
「婚約に当たっての条件に盛り込みましたからね。今更違えることはしませんよ。それに、ケイトさんには年の離れた弟さんがいるんですよ。僕がネイトを可愛がるのと同じくらい可愛がっていますからね。僕と結婚して、弟さんの可愛い盛りを、成長を見過ごすなんて、そんな非道なことは、僕にはできませんから」

 セディーがそう力説すると、

「セディーと同じくらい?」

 ぱちぱちと瞬くペリドットの瞳。

「まぁ、セルビア嬢は、リヒャルト君ラブですねぇ」
「はい。弟さんのリヒャルト君を可愛がってくれない相手は、願い下げだと断言するくらいには」
「・・・そうか。まぁ、頑張るといい」

 ぽん、と励ますようにお祖父様がセディーの肩を叩きました。

 多分、里帰りの件は了承したということでしょうか?


__________


 お祖父様の名前はヒューイです。名前は少し前から決まってたんですけど、ようやく出ました。(笑)
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