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番外。ブラコン同盟結成24
しおりを挟む「そんなに簡単に他人を信用しても宜しいのですか? 次期侯爵様が」
ひやりとした声と厳しい目が向けられる。
「一応、人を見る目はあるつもりなので。それに、僕は色々と恩を売っていますから」
「・・・そうですか。ハウウェル様は、大変貴族らしい方でしたね」
僕の応えに、深い溜め息。
「お褒めに与り光栄です。では、メリットの方を話しますね? 離縁がしたくなったら、言ってください。すぐには難しいかもしれませんが、時期を見て応じます。慰謝料もお支払いしますので、その辺りはご心配なく」
「最初に話すのが、離縁のことですか・・・」
呆れたような声。
「ええ。大事なことでしょう? こういうことは、最初にきちんと決めておいた方が後々拗れ難いと思うので。そして、侯爵夫人が必要とされるとき以外は、いつでも里帰りしてくれて構いません」
「ハウウェル様は、婚姻関係をどうお考えで?」
「? ケイトさんが、帰りたいかと思いまして」
「わたしが……?」
「ええ。これから、リヒャルト君はどんどん成長して行くでしょう? その成長過程を見過ごすのは、つらいことではありませんか? 僕は、ネイトと何年も離れていたので、大きくなって行くネイトを見守ることができなくて、酷く悔しい思いをしましたから。うちとセルビア家は、少々離れていると言っても、馬車で数時間程度。馬に乗るともっと早いと思いますし、大した距離ではありませんから。お好きなときに里帰りをどうぞ」
「……嫁いで行った娘は、もう婚家の者。気楽に実家には帰れないものと思え、というのが常識だと思うのですが……」
ぽつんと落ちる呟き。
「ケイトさんが結婚を躊躇っていたのも、それが原因ですか? 結婚して嫁ぐと、リヒャルト君とは頻繁に会えなくなってしまう、と。そういう教えは、もう古いと思いますよ? うちは、おばあ様が隣国出身の方ですからね。若い頃には、ちょくちょく帰ったりしていたみたいですから」
「そう言えば、そうでしたね」
「ええ。隣国と比べれば、馬車で数時間なんて大した距離ではないでしょう? それに、可愛い弟を見守りたい気持ちは、僕には非常によくわかるので。別に結婚したからといって、家に帰るな、可愛い弟に会うな、と言う程、僕は鬼ではありませんよ」
「そうですか……」
「どうです? 僕と婚約したくなりましたか?」
「……いいでしょう。わたしには、とても魅力的な条件なので、お受け致します」
「ありがとうございます。あ、そうだ。リヒャルト君が成長して、学園に通うようになったとき、できれば行事などの情報を僕にも教えて頂けると嬉しいですね」
ケイトさんと一緒にリヒャルト君の成長を見守るのも楽しそうだ。
「わかりました」
「では、婚約期間の調整や式については、セルビア伯爵夫妻やお祖父様、おばあ様も交えて決めましょうか」
「ええ・・・」
「どうかしましたか?」
なにやら思案するような顔をするケイトさん。
「いえ、大したことではありませんが……ハウウェル様とわたしの関係は、婚約や婚姻というよりは、同盟のようだと思いまして」
「ふふっ、いいですね。では、僕達の同盟は、無事締結したということで」
手を差し出すと、すっと手が握り返される。
僕の手よりも小さいのに、少し硬くてネイトの手に似ているなと思った。
__________
長かったですが、これでブラコン同盟編は終了です。次回からネイサン視点に戻ると思います。
そして、宣伝です。
『俺の暗殺を企んでいる(と思しき)婚約者に婚約破棄を叩き付けたら、社会的に抹殺されたっ!?』という短編を投稿しました。
内容はタイトル通り。主人公のクズ王子は、社会的に抹殺されます。
※2話目以降から、会話や長セリフ多め。
※途中、ガッツリ下ネタ入りますが、エロはありません。
※人によってはギャグに見えるかもしれませんが、ブラックです。
既に書き上げ済みで、全7話。公開中です。
興味がある方は、覗いてやってください。
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