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番外。ブラコン同盟結成17
しおりを挟む「どういう意味ですか?」
「僕に、弟がいることはご存知ですよね?」
「ええ。あれだけ自慢されましたので」
そう。ケイトさんとはお互い、自分の弟に対する愛情を語り合った仲だ。
「その僕の可愛い弟が、来年この学園に入学する予定なんです。なので、ケイトさんが卒業するまでの間に、僕の弟を、『自分の弟みたいに可愛がってもいい』と思ったら、僕の勝ち。そうは思えなかったなら、ケイトさんの勝ち。どうです? 簡単な勝負でしょう?」
「なにを言うかと思えば、そんなの・・・当然、ハウウェル様の弟君よりも、わたしのリヒャルトの方が絶対可愛いに決まっています!」
胸を張ってキッパリと断言するケイトさん。
「なら、受けて頂けますね? ケイトさんが、僕の弟のネイト……ネイサン・ハウウェルを『実の弟のように可愛がってもいい』と、そう思わなければいいだけなんですから。そして、勝負を受けると将来、僕が弟さんの助けになることは確実。なにも悪いことはないでしょう?」
「……ハウウェル様の弟君とは、特に接触をしなくても宜しいのでしょうか?」
「まぁ、ネイトとは学年も違いますからね。無理に接触をしなくてもいいですよ」
多分、ネイトは乗馬クラブに興味を持つだろうから。そしてケイトさんは、来年から乗馬クラブの副部長になる予定だ。
無理に接触する必要は無い。なぜなら、顔見知りになればきっとケイトさんも、素晴らしく可愛らしくて優しいネイトの魅力に気付くことだろう。
あと、ケイトさんに言っておくべきことは・・・
「ちなみにですが、僕は特に子供がほしいとは思っていませんので。婚約しても必要最低限のエスコートなどはしようと思いますが、それ以外はケイトさんが嫌なら、誓ってなにもしません。その辺りは安心してくださいね? 多分、言うまでもなく、ケイトさんの方が僕よりもお強いと思いますし」
男が嫌いだという女性に無理強いすることは、最低だと思うから。それに僕自身、あまり女性は好きじゃないし。無理に近付かれる不快感を知っている。
あと、さすがに非力とまでは思わないけど……運動はてんでダメだからなぁ僕。噂によると、剣や鞭まで扱えるというケイトさんには、敵う気が全くしない。
「だから……というワケではありませんが、ケイトさんの意志を尊重すると約束します」
「・・・いいでしょう。その勝負、お受けします」
少し思案するような顔をして頷いたケイトさんが、
「それにしても、ハウウェル様はなぜそのような勝負をしようと思ったのですか?」
不思議そうに尋ねた。
「そうですねぇ。ケイトさんとは仲良くできそうだと思ったのが一つと、ネイトを大事にできないような女性は、願い下げだからですね。そんな女性と結婚するくらいなら僕は、一生独身でも構いません」
そして、かなり失礼だからこれは言わないけど、ケイトさんの性格はあまり女性っぽくはない。めそめそと泣く鬱陶しい、母のような女性が苦手な僕としては、ケイトさんのさっぱりとした性格は、とても付き合い易い。
むしろ、母と重なるところが殆どないところがいいのかもしれない。
「ハウウェル様と仲良くできるかは兎も角、確かに、弟を……リヒャルトを大事にできないような相手は願い下げというのは、非常によくわかります。わたしも、そのような男は願い下げです」
うんうんと頷くケイトさん。やっぱり、ケイトさんはこの気持ちをわかってくれるんだ。
「ありがとうございます。では早速、ネイトの魅力をお伝えしましょう。あ、僕の話を聞いて、『自分の弟みたいに可愛がってもいい』と思ってくれてもいいんですよ?」
「ハウウェル様の方こそ、リヒャルトの天使のような愛らしさを教えて差し上げます」
と、ネイトとリヒャルト君との魅力を熱く語り合ったけど、やっぱり言葉だけでネイトの魅力の全てを伝えるのは難しかったようだ。
それからも折に触れ、お互いに自分の弟の魅力を熱く語り、どちらの弟の方が可愛いのかと議論したけど、ケイトさんが負けを認めることはなかった。
季節は巡り、とうとう僕の卒業を迎え――――
__________
セディーとケイトさんのロマンスを期待していた方がいたなら、すみません。
全く甘い雰囲気になりませんでした。(笑)
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