虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
258 / 673

番外。ブラコン同盟結成15

しおりを挟む


 だから・・・僕は、このままずっと独身でもいいと思っていた。

 侯爵位を継ぐ上で若干の不便があるかもしれないけど、女性のことは別に好きじゃないし。まぁ、別に男色というワケでもないけど。

 強いて言えば、僕は他人への興味が薄いのかもしれない。勿論、嫌いな人間はそれなりに多いけど。

 後継問題だって、ネイトが結婚して子供が生まれれば、その子を養子にもらってハウウェル侯爵家を継いでもらえばいいと思っているし。そうじゃなければ、伯母様のところの誰かからもらうという手もある。

 けど・・・

「セルビアさん」
「はい、なんでしょうか?」
「ケイトさん、とお呼びしても?」

 ケイトさんの名前は、ネイトと音が似ていて呼び易くて好きだ。

「? ええ、構いませんが」
「お気を悪くしたなら謝りますが、ケイトさんって男が嫌いですよね?」
「・・・なぜ、そう思うのです?」

 ほんの少し、硬くなる声。じっと、窺うように僕を見返す瞳。

「まぁ、見ていれば、という感じでしょうか。ケイトさんは、女子生徒と話すときにはそうでもないのですが、男子生徒と話すときには、少し身構えているような雰囲気になりますから」

 親族にもいる男を差し置いて、次期伯爵候補の女性となれば、無駄に嫉妬されることが多かったことだろう。乗馬クラブに入って来たときだって、やたら男子生徒に絡まれて、結構大変な思いをした筈だ。
 男の嫉妬は醜いというし。それが小さな頃からだとすれば、彼女が男嫌いになっても、なにもおかしくはない。

 僕は、ちゃんと能力がありさえすれば、男か女かなんてことは、大した問題じゃないと思うんだけどね。
 ハウウェル家だって、どうせなら、父なんかよりも伯母様が継いだ方が良かったのかもしれないと思っているくらいだし。

「・・・嫌いではありません。あまり、好きではないだけです」

 溜め息と共に落ちる言葉。

「そうですか。実は、僕もあまり女性が好きではないんですよね」

 さらっと言った言葉に、

「・・・ハウウェル様? それは・・・」

 戸惑うようにケイトさんの視線が揺れる。

「ああ、僕は別に、男の方が好きというワケでもないですよ?」

 女性が好きではないと、真っ先に男色を疑われてしまうのが、なんとも言えないよねぇ。

「そう、ですか」
「はい。それで、ですね。ケイトさんへ婚約を申し込んでもよろしいでしょうか?」
「・・・は? なんでいきなりそうなるんですか?」

しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

この声は届かない

豆狸
恋愛
虐げられていた侯爵令嬢は、婚約者である王太子のことが感知できなくなってしまった。 なろう様でも公開中です。 ※1/11タイトルから『。』を外しました。

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

跡継ぎが産めなければ私は用なし!? でしたらあなたの前から消えて差し上げます。どうぞ愛妾とお幸せに。

Kouei
恋愛
私リサーリア・ウォルトマンは、父の命令でグリフォンド伯爵令息であるモートンの妻になった。 政略結婚だったけれど、お互いに思い合い、幸せに暮らしていた。 しかし結婚して1年経っても子宝に恵まれなかった事で、義父母に愛妾を薦められた夫。 「承知致しました」 夫は二つ返事で承諾した。 私を裏切らないと言ったのに、こんな簡単に受け入れるなんて…! 貴方がそのつもりなら、私は喜んで消えて差し上げますわ。 私は切岸に立って、夕日を見ながら夫に別れを告げた―――… ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

処理中です...