虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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番外。ブラコン同盟結成13

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「まあ! さすがは、次期当主となるべく育てられた方はお強いですわね」

 心配そうなのは顔だけで、声は弾んでいますが。

「わたくしなら、婚約解消をされてしまったら、とてもとても平静ではいられなくて、しばらくは学園を休んでしまうかもしれませんわ。ケイト様の元婚約者の方は、学年は違いますけど、この学園にいらっしゃるのでしょう? 不安ではありませんか?」

 成る程。どうやらわたしの面の皮が厚い、と言いたいようですね。

「いえ。彼とは学年が違うので、顔を合わせることも然程さほどないと思うので。ちなみに、わたしが婚約を解消されたのではなくて、わたしの方から申し出て、円満に・・・解消されたのです。お間違いなきよう」

 まぁ、少々腹が立ったので、平手打ちを食らわせてしまいましたが、その後は特にごねられることもなく、すんなりと婚約解消できましたし、円満解消と言ってもいいでしょう。

 彼の方も、セルビア伯爵である父にあのこと・・・・は言い付けられたくはないでしょうからね。

 あれ・・を聞いたら、きっと父も激怒するでしょうし。下手をすると、彼の家を潰そうと動くかもしれません。それなら、わたしに殴られたことを我慢してでも、円満解消・・・・の方を選ぶでしょう。

 無論、あのようなことを口にした彼には、二度とうちの敷居を跨がせるつもりはありませんけど。

 元婚約者の彼とは学年も違いますし、接点も無くなったのですから、これからは彼と遭遇するような機会も、そうそうあるものではないでしょう。
 それに、婚約者であったときから、顔を合わせることもあまりなかったのですから、余計に。

 考えてみれば、彼は本当に次期セルビア伯爵であるわたしにしか興味が無かったのでしょう。もしかすると、自分の方が伯爵になることでも考えていたのかもしれませんね。

 まぁ、彼とはもう赤の他人なので、話をするつもりが無いので、確かめることはありませんが。

「そ、そうなのですか? では、彼の方になにか問題があったのでしょうか? よろしければ、ケイト様の相談に乗らせて頂きますわ。愚痴でもなんでも、是非仰ってくださいな」

 判り易くキラリと光るその瞳は、まるで獲物を狙っているようです。そういえばこの方は、他人のゴシップが大好きという方でしたかしら? 確か、彼女に内緒の相談すると……内緒の筈の話が、あちこちで噂されるようになるそうです。

「では、遠慮なく相談させて頂きますね? 実は、授業で習う法律についての解釈が難しいと思うのですよ。改訂された憲法があって、その改訂前と改訂後の文面の暗記と、その法律の解釈について、少々てこずっているのです。宜しければ、是非法律の解釈について話し合いませんか?」

 微笑みながらそう言うと、ヒクリと彼女の頬が引きりました。

「そ、そうでしたか……その、申し訳ありませんが、ケイト様。わたくし、急に用事を思い出してしまいましたわ。大変残念ではありますが、失礼させて頂きますね?」

 そして、そそくさと席を立って行ってしまいました。女子生徒で、難しい勉強の話を好き好んでしたがるような人は、あまりいませんからね。

 翌日から、『空気を読まないで小難しい話をする賢しらな女だから、ケイト・セルビアは婚約解消をされた』、『ケイト・セルビアは面の皮が厚いから、平気な顔をして学園に通えるのだ』という噂が立ちました。

 婚約を解消して、とても清々した気分になったのですが、このように面倒なことが起こるという弊害もあるのですね・・・

 ある程度の覚悟はしていましたが、存外煩わしいものです。

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