虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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番外。ブラコン同盟結成11

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「君の弟なんか、生まれなければよかった!」
「・・・今、なんと?」
「君の弟が生まれなけばよかったのにな! 君が弟を可愛がっていると聞いたが、それもどうだか? 本当は弟のことを嫌っているんじゃないのか? 弟になにかあれば、次期伯爵は君だから……ぶっ!?!?」

 バンっ!? という破裂音と、次いで床に倒れる元婚約者。そして、手に走る痺れ。

「な、なにをするっ!? お、女のクセに男を殴っていいと思ってるのかっ!?」

 尻もちを着いたまま頬を押さえ、驚いた顔でわたしを見上げる彼。

「なにを? そうですね。この家が、どこの家かご存知でないのでしょうか? 嫡男の誕生を心待ちにして、皆で大事に育てているという我が家の中で、その嫡男が生まれなければ? 巫山戯るのも大概になさいっ!!!! たかが入り婿予定・・の婚約者の分際で、そのような口を利いていいとでも思っているですかっ!?!?」
「っ!?」

 わたしに言われ、ようやく自分の発言のまずさに思い至ったのか、彼の顔面がさっと蒼白になる。

「わたしのことが気に入らなければ、最初から婚約を了承などしなければよかったのです。でなければ、途中からでも婚約の解消を申し入れればよかったのです。今のは、聞かなかったことにしておきますので、さっさと帰って、婚約解消に同意してください。では、失礼」
「……っ、ケイト!」

 慌てたように呼ぶ声に、酷く不快になる。

「呼び捨てにしないで頂けます? あなたとわたしには、もうなんの関係も無いので。お帰りは気を付けてください。先程の発言を、誰が聞いているのかわかりませんので」

 そう言って、呆然とした様子の彼をうちから追い出した。

 なにやら腰が抜けていたようでしたから、男性の使用人に玄関の外まで運ばせ、今後一切うちの敷地には入れないようにと言い付けておきました。

 使用人達は困惑した様子でしたが、喧嘩をしたので顔も見たくないと言ったら、「お嬢様がそんなに怒るとは珍しいですね」と、驚いた顔で納得されました。

 全く、人は追い詰められたときに、その人の本性が表れるとは言いますが、とんだ嫌な男だったではないですか。

 さて、では早速、父にあの方との婚約解消の話をしに行きましょう。

 父の書斎へ足を向け、ノックをして中へ。

「ケイトです。大事なお話があって来ました」
「そうか」
「ええ。単刀直入にお話をします。ついさっき、婚約者と喧嘩をしてしまいました。もう、二度と顔も見たくないので、あの方との婚約を今すぐ解消してください」
「・・・は? いや、ちょっと待てケイト、今、なんて言ったっ?」

 ぎょっとした顔のお父様。

「ですから、つい今し方、あの人と喧嘩をして、腹が立ったのでぶん殴って追い出しました。ついでに、今後一切うちの敷居を跨がせないよう、使用人達にも言い付けておきましたので。お父様も、二度とあの方を我が家へ呼ばないでくださいね?」
「はあっ!? いや、落ち着きなさいケイト、一体彼となにがあったんだっ!?」
「そうですね。強いて言えば、婚約条件の認識不足でしょうか? わたしが伯爵にならないのなら、結婚はしたくないそうですので。わたしも、あんな男は願い下げです」

 にこりと微笑むと、お父様の顔が慌てたものになって行きます。
 
「なっ……け、ケイト? 伯爵家当主ではないにしろ、結婚して我が家の男爵位を継ぐという選択もあるんだぞ?」
「ごめん被ります」
「い、今婚約を解消すると、いい縁談が見込めない可能性もあるんだぞっ!?」
「はい。わかっています。ですが、お父様は言いましたよね? 暫くはわたしの好きにしていい、と」
「そ、それは確かに言ったが……」
「では、彼との婚約解消をお願いします」

 そう言って、書斎から出た。

 では、リヒャルトのところへ行きますか♪

✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰


 ケイトさんは、腰を入れて平手を叩き衝けました。(笑)

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