上 下
253 / 673

番外。ブラコン同盟結成10

しおりを挟む


 すっかり忘れていましたが、わたしには婚約者がいたのでしたね。

 この方とは、婚約が決まってから数年来の付き合いで、リヒャルトが生まれる前までは、一応仲良くしようと思っていたのですが……

 当主補佐としての勉強をしにうちに通っていたのですが、あまりわたしに顔を見せには来ませんでした。勉強が終わると、疲れたとさっさと帰ってしまっていましたし。

 わたしの誕生日にはプレゼントを頂いたとは思いますが、筆記用具などの消耗品だったような気がするので、特に嬉しいとも思わなかったですね。一応、わたしもプレゼントはお返ししましたが、義務的なものでした。

 それに、なによりこの人は・・・リヒャルトの誕生を、祝ってはくれませんでした。

 わたしがリヒャルトとよく過ごしていることを知っていても、挨拶にも来ない。そんな人の印象が薄いのも当然のような気がします。

「それで、お話とはなんでしょうか?」
「どういうことだ? 君は次期伯爵候補から下ろされたというのは? 弟が生まれても君は、変わらずに当主候補だと言ったじゃないか? 騙したのかっ?」

 いきなり捲し立てられました。

「騙したワケではありません。元々、そういう婚約の条件だった筈です。セルビア伯爵家に嫡男が誕生したら、わたしは跡取りから外される。ケイト・セルビアは暫定の次期当主候補。そういう風に契約書を交わし、あなたの家と婚約したのですから」
「!」

 そんな驚いた顔をされても困るのですけどね。

「わかって頂けましたか?」

 婚約者の顔を見詰めると、

「……伯爵にならないなら、君のように冷徹な女とは結婚したくない。自分が上に立つことしか考えず、男を立てることを知らないからな、君は!」

 始めは小さな声だったのに、言っている途中から興奮したのか、怒鳴るような言葉に変わりました。

「そうですか」

 というか、始めから彼の婿入りが前提の、それも当主の伯爵はわたしという条件の婚約でしたから、わたしが彼を立てるのではなく、彼の方がわたしを立てるべきだったと思うのですが……特に支えられた覚えはないですね。学園でも、学年が違いますし。

 そもそも、暫定当主候補の入婿その条件が嫌だったのであれば、わたしとの婚約を断ればよかったのです。

「では、婚約解消ということで宜しいですね?」
「君のそういうところが嫌なんだ! 泣いて縋って見せればまだ可愛げがあるのに!」

 泣けと言われても、この方のことは政略結婚のお相手としか見ていなかったので、婚約解消をしても特に悲しいとは思いませんね。

「君の弟なんか、生まれなければよかった!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

素顔を知らない

基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。 聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。 ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。 王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。 王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。 国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」 書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。 今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、 5年経っても帰ってくることはなかった。 そして、10年後… 「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

処理中です...