虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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番外。ブラコン同盟結成9

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✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰

 週末や長期休暇に帰省する度にリヒャルトと一緒に過ごして、その可愛さにきゅんとして、リヒャルトのできることが増える度に感動して、その成長を見守って――――

 そういう風に過ごしていたある日。

「ケイト。話がある」

 と、父から切り出されたのは・・・

「リヒャルトは健康で、特に問題がなさそうだからな。そろそろ、セルビアの次期当主として扱おうと思う。今までケイトにはつらい思いをさせたが、これでお前は自由だ。今までの分、暫くは好きに過ごして構わない」

 父がリヒャルトをセルビア伯爵家の次期当主として遇するというのなら、わたしは次期当主候補から外されるということです。

 次期伯爵候補から、ただの伯爵令嬢になるということです。

 まぁ、別にいいですけど。

「わかりました。では、失礼します」
「ま、待てケイト」

 早くリヒャルトのところに行きたいのに、呼び止められてしまいました。

「はい? なんでしょうか? お父様」

 振り向くと、

「そ、その、だな。お前さえよければ、リヒャルトに当主としてのあれこれを教えてやってくれないか? お前達は、仲が良いだろう?」

 父が、わたしとリヒャルトの仲が良い、と言ってくれました。

 とうとう、わたしがリヒャルトを愛していることを認めてくれたのですっ!?

「もちろんですお父様。では、早速リヒャルトに伝えて来ます」

 と、部屋を出ました。

 「あ、待て ケイト、 お父様 ともっと 話、を……」

 ドア越しになにか声が聞こえたような気がしなくもないですが、早くリヒャルトのところへ行かなくては。

 ああ、リヒャルトに勉強を教えることができるなんて・・・

 どういう風に教えればいいのでしょうか?

 わくわくしながらリヒャルトの部屋に行き、

「リヒャルト!」

 ドアを開けて両腕を広げると、

「けーとねーしゃま!」

 パッとわたしを呼びながら駆けて来て、ぎゅ~っと抱き付いて来ます。

 ああ、可愛い♡

「リヒャルト」
「はい、なんですか? けーとねーしゃま」

 きょとんと首を傾げてわたしを見上げるリヒャルトも、最高に可愛いですねっ!

「そろそろ、リヒャルトもお勉強をしなくてはいけません」
「おべんきょー?」
「ええ。それで、リヒャルトのお勉強を、偶にお姉様が教えることになったのですよ」
「おねーしゃまとおべんきょー?」
「はい。一緒に頑張りましょうね?」
「はーい」

 素直な返事です。

「ああもうっ、リヒャルトはなんて可愛いのっ♡」
「きゃー♪」

 ぎゅっと抱き締めると、高い声を上げてころころと笑うリヒャルト。

 こうして、週末、長期休暇をリヒャルトと一緒に遊んだり、当主教育をしたりして過ごして――――

 リヒャルトの可愛さに夢中で、リヒャルトのことで頭が一杯だったわたしを、深刻な顔をした婚約者が訪ねて来たのです。

 すっかり忘れていましたが、わたしには婚約者がいたのでしたね。


__________


 なにげにヒドいケイトさん。(笑)

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