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番外。ブラコン同盟結成7
しおりを挟む「そう、ですね」
乗馬が下手で、馬に上がるのにももたついて、馬に舐められているようなところばかり見ていたから、あまり意識することがありませんでしたが、この人は……ハウウェル様は、上位貴族に成ることが約束されている人でしたね。
ハウウェルの侯爵家を継ぐ方。初めて、そう実感しました。
「後継問題は、どこの家にも付きものですから」
「ええ……」
次に生まれて来るのが妹か、弟か・・・
それは、ずっと言われていたことです。「弟が無事に成長したら、ケイトは用済みだ」とは、親族にはよく言われていました。今でも、顔を合わせる度にわざわざ言って来ますし。挙げ句、「嫁の貰い手の心配でもしておくんだな」などと、余計なことも・・・
「セルビアさんが、本当は弟さんを可愛がりたいと思っていることを知らないで、言いたい放題。周りの人間に、弟さんとの仲を、勝手に悪くさせられてもいいんですか?」
「え?」
「そろそろ話せるようにもなると思いますし。そのうち、セルビアさんは弟さんに聞かれてしまうんじゃないですか? 『自分のことが嫌いなの?』と」
「そんなことはありませんっ!?」
思わず、強く言い返していました。
「そうですか。では、それを直接弟さんへ伝えてみればいいと思いますよ?」
怒鳴ってしまったというのに、にこりと微笑むハウウェル様。
「で、でも、リヒャルトはまだ一歳ですよ? 言葉が通じるとは……」
「一歳だとしても、言葉が通じなくても、目の前にいる相手が、自分のことを好きか嫌いかくらいは判ります。それに、小さい子に長いこと会わないでいると、酷く恐ろしいことが起こるんですよ? 知っていますか?」
じっと、真剣な瞳がわたしを見据えます。
「恐ろしいこと、ですか?」
「ええ、非常に恐ろしいことです」
「それは、一体……」
「忘れられてしまうんです」
「え?」
「幾ら血縁なのだとしても、小さい子というのは、あまり会わない相手のことは、すぐに忘れてしまうんです。そして、兄弟だというのに、きょとんとした顔で、『はじめまして』と、言われてしまうのですよっ!! 自分の可愛がっている弟に、そんなことを言われてしまってもいいんですかっ!? あれは結構なダメージですよっ!? いえ、それでも、うちのネイトはすっごくすっごく可愛かったんですけどねっ!?」
いきなり取り乱すハウウェル様。どうやら、ハウウェル様の経験則のようです・・・
おそらくはハウウェル様方の幼少期の頃のことだとは思いますが、弟さんに忘れられてしまう程、会えなかったのですか。
・・・いつか、多分そろそろだとは思いますが、喋れるようになったリヒャルトに、「だぁれ?」なんて言われると思うと・・・む、胸が痛いっ!!!!
あ、なんかちょっと泣いてしまいそうです。
「セルビアさん、今ならまだ間に合う筈です!」
と、ハウウェル様に説得をされたわたしは、週末は家に帰ってリヒャルトに会いに行こうと固く決意しました。
あんな、「だぁれ?」なんて、忘れられるなんてそんな、想像するだけで胸が締め付けられるように苦しいというのに・・・事実になってしまったら、心底恐ろしい。
それから、一日千秋の思いで数日を過ごし、週末の放課後には即行で帰宅し、父を無視してリヒャルトに構い捲りました。
誰に、『ケイトはリヒャルトのことを嫌っている』と思われてももう関係ありません。
わたしが、リヒャルトのことを好きであればそれでいいのです。
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