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番外。ブラコン同盟結成4
しおりを挟む「そうでしたか。ハウウェル様はきっと優秀な方なのでしょうね」
今はテスト期間で、部活に精を出している生徒はあまりいない。そういう生徒は、テストに自信があるか余裕な人。そうでなければ、テストを諦めて自棄になっている人か、変わり者くらいなもの。
ハウウェル様は、自棄になっているような雰囲気には全く見えないので、余裕のある方なのだと思います。まぁ……変わり者、という可能性もありますけど。
「そう言うセルビアさんだって、上位クラスではなかったですか?」
「ハウウェル様は、わたしのことを知っているのですか?」
「いえ、直接お会いするのは今日が初めてだと思いますよ? ですが、僕も去年までは中等部にいましたからね。張り出されるでしょう? 成績優秀者の席次は。セルビアさんは、ずっと五位以内をキープしていましたよね」
にこにこと言い募るハウウェル様。
「他学年の方の席次をチェックしているのですか? ハウウェル様は」
他学年にお知り合いでもいるのでしょうか?
「ええ。後輩に勉強を教えることがあるので。面白いですよ? 勉強を教えた後輩の順位が伸びて行くのは」
そういうことでしたか。どうやらこの方は、成績上位者の中でも、かなり余裕のある方なのでしょう。そして、記憶力も良いのでしょう。しかも、教えた方の成績が伸びて行くというのなら、教え上手なのかもしれませんね。
「それに、今はテスト期間ですから。余裕が無い人は来ないでしょう? まぁ、セルビアさんがテストを投げているという可能性も、なくはないですけどね」
クスクスと冗談めかして笑う声。けれど、イヤミは特に感じられない。
同年代の男子の中で、こんなにわたしへ穏やかに接してくれる方は初めてです。年上の方だからでしょうか? それとも、わたしのことは成績でしか知らないからでしょうか?
鞭を振り回すような女だと知れたら、他の男子生徒のようにわたしを敬遠するのでしょうか?
「ハウウェル様は、どうしてここへ?」
「ぁ~、それは……ま、見られたから仕方ないか……」
ちょっと困ったような顔で呟いて、
「下手だったでしょう? だから、人がいないときにこっそり練習しようと思って」
ハウウェル様は恥ずかしそうに口を開く。
まぁ、確かに。お世辞にも、上手いとはとても言えない残念な腕でしたね。
「そうでしたか。その、差し出口かもしれませんが、あまり乗馬が上手くはないのでしたら、ハウウェル様には、もっと気性の優しい子の方が宜しいかと思いますよ? その子は賢いのですが・・・」
ハッキリ言うと、ハウウェル様は馬に完璧舐められていますね。まぁ、さすがにそれは、口を濁しておきますが。
「少々イタズラ好きな子なので。さっきのもきっと、ハウウェル様を揶揄ったのでしょう」
「ええっ!? そうなのっ!?」
全く悪びれる様子のない、悪い馬を見上げるハウウェル様。
「ええ、その……乗馬を、お嫌いになりましたか?」
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