虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
247 / 673

番外。ブラコン同盟結成4

しおりを挟む


「そうでしたか。ハウウェル様はきっと優秀な方なのでしょうね」

 今はテスト期間で、部活に精を出している生徒はあまりいない。そういう生徒は、テストに自信があるか余裕な人。そうでなければ、テストを諦めて自棄ヤケになっている人か、変わり者くらいなもの。

 ハウウェル様は、自棄になっているような雰囲気には全く見えないので、余裕のある方なのだと思います。まぁ……変わり者、という可能性もありますけど。

「そう言うセルビアさんだって、上位クラスではなかったですか?」
「ハウウェル様は、わたしのことを知っているのですか?」
「いえ、直接お会いするのは今日が初めてだと思いますよ? ですが、僕も去年までは中等部にいましたからね。張り出されるでしょう? 成績優秀者の席次は。セルビアさんは、ずっと五位以内をキープしていましたよね」

 にこにこと言い募るハウウェル様。

「他学年の方の席次をチェックしているのですか? ハウウェル様は」

 他学年にお知り合いでもいるのでしょうか?

「ええ。後輩に勉強を教えることがあるので。面白いですよ? 勉強を教えた後輩の順位が伸びて行くのは」

 そういうことでしたか。どうやらこの方は、成績上位者の中でも、かなり余裕のある方なのでしょう。そして、記憶力も良いのでしょう。しかも、教えた方の成績が伸びて行くというのなら、教え上手なのかもしれませんね。

「それに、今はテスト期間ですから。余裕が無い人は来ないでしょう? まぁ、セルビアさんがテストを投げているという可能性も、なくはないですけどね」

 クスクスと冗談めかして笑う声。けれど、イヤミは特に感じられない。

 同年代の男子の中で、こんなにわたしへ穏やかに接してくれる方は初めてです。年上の方だからでしょうか? それとも、わたしのことは成績でしか知らないからでしょうか?

 鞭を振り回すような女だと知れたら、他の男子生徒のようにわたしを敬遠するのでしょうか?

「ハウウェル様は、どうしてここへ?」
「ぁ~、それは……ま、見られたから仕方ないか……」

 ちょっと困ったような顔で呟いて、

「下手だったでしょう? だから、人がいないときにこっそり練習しようと思って」

 ハウウェル様は恥ずかしそうに口を開く。

 まぁ、確かに。お世辞にも、上手いとはとても言えない残念な腕でしたね。

「そうでしたか。その、差し出口かもしれませんが、あまり乗馬が上手くはないのでしたら、ハウウェル様には、もっと気性の優しい子の方がよろしいかと思いますよ? その子は賢いのですが・・・」

 ハッキリ言うと、ハウウェル様は馬に完璧舐められていますね。まぁ、さすがにそれは、口を濁しておきますが。

「少々イタズラ好きな子なので。さっきのもきっと、ハウウェル様を揶揄からかったのでしょう」
「ええっ!? そうなのっ!?」

 全く悪びれる様子のない、悪いを見上げるハウウェル様。

「ええ、その……乗馬を、お嫌いになりましたか?」


しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

王太子殿下が欲しいのなら、どうぞどうぞ。

基本二度寝
恋愛
貴族が集まる舞踏会。 王太子の側に侍る妹。 あの子、何をしでかすのかしら。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します

シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。 両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。 その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

処理中です...