246 / 673
番外。ブラコン同盟結成3
しおりを挟む誰かに呼ばれたと思い顔を上げると、ぽつんとした馬場に、わたしの他にも馬に乗っている生徒がいたのです。
見知らぬ人ではあったのですが、呼ばれたのに無視するのは失礼だと、その男子生徒の近くに並んで声を掛けました。
「呼びましたか?」
と言った瞬間、
「え? ぅわっ!?」
びっくりさせてしまったのか、馬の腹を蹴ったようで、パッと馬が駆け出しました。
わたしは、彼がすぐに馬を宥めると思ったのですが、なんというか・・・ハッキリ言って、下手でした。あまりにも危なっかしく、このままでは彼が落馬してしまうと思い、パニックになっている彼へと並走して手綱を握り、
「わたしが止めますから、落ち着いてください!」
と、焦る彼と馬へと声を掛けながら宥めて、足を止めさせました。
止まった馬からゆっくりと降り、
「・・・びっくり、したぁ・・・」
青い顔で胸を押さえた彼が、
「ありがとうございました。お陰で助かりました」
わたしの方を向いてお礼を言ったのです。
てっきり、過去に助けた男子のように「女のクセに生意気だ」とか、「出しゃばるな」などと言われてしまうと思ったのに。
「・・・ぁ、いえ。こちらこそ驚かせてしまったようで、申し訳ありませんでした」
頭を下げると、
「えっと、僕はセディック・ハウウェルですが、あなたは? 初めまして、ですよね?」
不思議そうな顔で自己紹介をされました。
「わたしはケイト・セルビアと申します」
わたしを呼んだのは彼の方だと思いながら、名乗られたので名乗り返すと、
「ああ、それで、呼びましたか? だったワケですか。すみません、僕が呼んだ……というか、独り言で言ったのはケイトさんのことではなくて、ネイトです。音が似ているので間違えたのでしょう。紛らわしい真似をして、すみませんでした」
謝られてしまいました。
「あ、いえ。こちらこそ、聞き間違いをしてしまいましたので……」
しかも、危うくハウウェル様へお怪我をさせてしまうところでした。申し訳なくて恥ずかしい・・・
「そう言えば・・・確か、セルビア家は少し前にご長男がお生まれでしたよね? おめでとうございます、セルビアさん」
にこりと微笑んで話を変えたハウウェル様。その顔には、今まで言われたお祝いの言葉のように、嘲りや憐れみが全く含まれていない、純粋に祝福するような表情でした。
わたしへ弟の話題を振る人達には、悪意や憐れみが透けて見える人ばかりだったのに・・・
「……ぁ、りがとうございます」
「? どうかしましたか?」
ハウウェル様はわたしの不自然なお礼の言葉に、首を傾げる。
「いえ。その、おそらくは学年も違うと思いますし、家同士の付き合いがあるというワケでもないのに、と思いまして。少々驚いてしまいました。わたしは中等部の二年なのですが、ハウウェル様は?」
驚いたのは本当です。実は、祝福されたことに、なのですけど。これは内緒にしておきましょう。
「僕は高等部の一年ですね」
二つ上の方でしたか。道理で見た覚えがない筈です。中等部と高等部では校舎が違いますからね。
「そうでしたか。ハウウェル様はきっと優秀な方なのでしょうね」
__________
セディーがヒロインっぽいかも。(笑)
10
お気に入りに追加
727
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】あなたの『番』は埋葬されました。
月白ヤトヒコ
恋愛
道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男にぐいっと強く腕を掴まれました。
「ああ、漸く見付けた。愛しい俺の番」
なにやら、どこぞの物語のようなことをのたまっています。正気で言っているのでしょうか?
「はあ? 勘違いではありませんか? 気のせいとか」
そうでなければ――――
「違うっ!? 俺が番を間違うワケがない! 君から漂って来るいい匂いがその証拠だっ!」
男は、わたしの言葉を強く否定します。
「匂い、ですか……それこそ、勘違いでは? ほら、誰かからの移り香という可能性もあります」
否定はしたのですが、男はわたしのことを『番』だと言って聞きません。
「番という素晴らしい存在を感知できない憐れな種族。しかし、俺の番となったからには、そのような憐れさとは無縁だ。これから、たっぷり愛し合おう」
「お断りします」
この男の愛など、わたしは必要としていません。
そう断っても、彼は聞いてくれません。
だから――――実験を、してみることにしました。
一月後。もう一度彼と会うと、彼はわたしのことを『番』だとは認識していないようでした。
「貴様っ、俺の番であることを偽っていたのかっ!?」
そう怒声を上げる彼へ、わたしは告げました。
「あなたの『番』は埋葬されました」、と。
設定はふわっと。
【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には
月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。
令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。
愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ――――
婚約は解消となった。
物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。
視点は、成金の商人視点。
設定はふわっと。
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
【完結】彼が愛でるは、龍胆か水仙か……
月白ヤトヒコ
恋愛
お母様が亡くなり、お父様が再婚して新しい義母と義妹が出来て――――わたくしはいつしか使用人同然の扱いを受けていました。
それでも懸命に過ごし――――という、よくあるチープな物語みたいな状況に、わたくしはつい数ヶ月前までおりました。
けれど、これまた物語のような展開で、とある高位貴族のご子息とお知り合いになり、あれよあれよという間に、彼がわたくしの状況を、境遇を、待遇を全て変えてしまったのでした。
正義感が強くて、いつもみんなに囲まれて、人気者のあなた。わたくしを助けてくれた、王子様みたいな優しいあなた。彼と婚約できて、幸せになれると信じておりました。
けれど、いつの間にか彼は別の……以前のわたくしと似た境遇の女性と親しくしなっていました。
「……彼女は、以前の君のような境遇にある。彼女のつらさを、君ならわかってあげられる筈だ。だから、そんなことを言わないでくれ。俺は、彼女を助けてあげたいんだ。邪推はやめてくれ。俺は、君に失望したくない」
そう言われ、わたくしは我慢することにしました。
そんなわたくしへ、彼の元婚約者だった女性が問い掛けました。
「ねえ、あなた。彼が愛でるは、龍胆か水仙か……どちらだと思います?」と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる