上 下
241 / 673

222

しおりを挟む


✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰

 ぼへ~っとしながら身支度を整え、食堂へ。

 いつもの面子がいたので、

「座るよ」

 と声を掛けて席へ着く。

「よう、ハウウェル。家はどうだった? おにーさんに構われた?」

 ニヤニヤ笑うテッド。

「……今回は、おばあ様とまったりな感じ?」
「おー、あの、ダンス中に男の足に穴を空けてやろうと狙ってる怖いばーちゃんなー。つか、そんな怖いばーちゃんとまったりなんかできんの?」
「……人のおばあ様に失礼なこと言わない。それはダンス中、気の利かない男に限りだよ。あと、さすがに穴は空けないから」

 うん。お祖父様の足に穴は無い。

「ふーん……で、ばーちゃん家に遊びに行ったん?」
「? 遊びに? ・・・ああ、わたしは、帰省するときには実家の方じゃなくて、お祖父様の家に帰っているんだよ」

 テッドの言葉に一瞬きょとんとして、普通は帰ると言えば大抵は両親のところへ帰るものだと思い至った。わたしは、その大抵・・の部分からは洩れる子だ。

「ぁ~、その、悪ぃ。ハウウェル」

 わたしが両親と折り合いが悪いということを思い出したのか、しまった……という顔で謝るテッド。

「ああ、別に気にしてないからいいよ」

 まぁ、わたしの他にも、事情があって実家に帰らない子はいるし。

「そんなことより、レザン」
「うん? なんだ?」
「暫くは放課後、君と行動させてもらうから」
「うむ。いいだろう」

 と、快諾。よし、アルレ嬢避けはこれでOK。

「ど、どうしたよハウウェル! なんか悪いもんでも食ったかっ!?」

 なぜか驚くテッド。

「……実はまだ寝惚けているのか?」

 そして、ぼそりと失礼なこと言うリール。

「変な物も食べてないし、寝惚けてもいないよ」
「だってお前、噂が嫌だからあんまり近寄るなってレザンに言ってただろうが?」
「や、わたしはそんなこと言った覚えはないんだけど?」

 多分、口に出してはいなかった筈だ。

「いーや、ハウウェルの態度がそれを物語っている!」
「態度って・・・」

 まぁ、間違ってはいないけど。でも、噂よりもアルレ嬢の勧誘の方が嫌だから仕方ない。

「そんなハウウェルが前言を撤回してレザンと行動したがるなんて絶対おかしい! さあ、なにがあったか言えっ!?」
「や、だから、わたしそんなこと言ってないんだってば。でも、そうだね・・・君達、アルレ嬢って先輩のこと知ってる?」
「アルレ嬢? なっ!? お前まさか女の子の突撃避ける為にレザンを利用する気かっ!? なんて非道なことをするんだこの野郎っ!? レザンみたいな強面イケメンを当てられたら繊細な女の子が可哀想じゃねぇかっ!?」

 なんか、怒鳴られた。

「……アルレっていうのは確か、関わるとあんまりよくない先輩じゃなかったか?」
「はあっ?」

 ぎろりとリールを睨むテッド。

「確か、男子生徒に声を掛けて回っている男好きの先輩で、彼女と親しくして成績がガタ落ちして、上位クラスを落とされた男子が何名もいるらしい。馴れ馴れしく話し掛けて来る女子の先輩には気を付けろ、と言われている」

 アルレ嬢。上位クラスで気を付けろと言われるようになるまで、男子生徒を数々たぶらかしていたとは。仕事熱心だと言えばいいのか、難あり子息が多いと思えばいいのか・・・

「え? マジ?」
「ああ。上位クラスの男子の間では有名な話だ」
「・・・ハウウェル、成績普通じゃん」
「彼女は、貴族子息達に声を掛けることでも有名だよ」
「・・・あ、顔と家のことで狙われてんのか?」
「まぁ、多分そんな感じ」
「……アルレって女子の先輩と仲良くすると、成績が落ちるらしいぞ。ハウウェルも気を付けろ」
「うん。だから、そのアルレ嬢避けにレザンと一緒にいるんだって」
「成る程なー。純粋に好意を寄せてくれるような女の子じゃない、と」

 どこかしょんぼりしたようなテッド。

 というか、純粋って・・・アルレ嬢とは真逆じゃないですかねぇ? あの人は、明確に腹黒いと思います。性格もそこそこ悪そうですし。

 テッドって、結構辛辣なこと言ったりする割に、どこか女性に夢見てるところがあるよね。

「まあ、困っているのなら力になるぞ。遠慮なく頼るといい」

 と、レザンが男前な返事をくれた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】あなただけが特別ではない

仲村 嘉高
恋愛
お飾りの王妃が自室の窓から飛び降りた。 目覚めたら、死を選んだ原因の王子と初めて会ったお茶会の日だった。 王子との婚約を回避しようと頑張るが、なぜか周りの様子が前回と違い……?

年に一度の旦那様

五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして… しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

【完結】愛してなどおりませんが

仲村 嘉高
恋愛
生まれた瞬間から、王妃になる事が決まっていたアメリア。 物心がついた頃には、王妃になる為の教育が始まった。 父親も母親も娘ではなく、王妃になる者として接してくる。 実兄だけは妹として可愛がってくれたが、それも皆に隠れてコッソリとだった。 そんなある日、両親が事故で亡くなった同い年の従妹ミアが引き取られた。 「可愛い娘が欲しかったの」 父親も母親も、従妹をただただ可愛いがった。 婚約者である王太子も、婚約者のアメリアよりミアとの時間を持ち始め……? ※HOT最高3位!ありがとうございます! ※『廃嫡王子』と設定が似てますが、別のお話です ※またやっちまった、断罪別ルート。(17話から)  どうしても決められなかった!!  結果は同じです。 (他サイトで公開していたものを、こちらでも公開しました)

愛しいねえ様がいなくなったと思ったら、勝手に婚約者が決められてたんですけどっ!?

月白ヤトヒコ
恋愛
わたしには小さい頃、大好きな大好きなねえ様がいた。そんなねえ様と過ごす愛しい日々が、ずっと続くと思っていた。けれどねえ様は、ある日突然いなくなってしまった。 ねえ様がいなくなって、めそめそ泣いていた幼いわたしに、お父様が婚約者を決めた。 その婚約者様は隣国に住んでおり、一度も会ったことが無い。そして、わたしの十五歳の誕生日。婚約者様と初めて顔合わせをする。 設定はふわっと。 ※百合ではありません。 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

ルーザー

烏帽子 博
ファンタジー
山本麗子は、母を交通事故で亡くし父親と二人暮らしをしていた。 麗子が高校2年生になったある日、父親が再婚することに。 父親の再婚相手の陽子には大学生の息子 俊一がいた。 父親の再婚から麗子には次々と不幸が襲ってくる。 そして、麗子もまた……… 不合理な死を麗子はとげるが、麗子は異世界へと転生をする。 転生した世界でも、麗子に幸せは訪れない。 ルーザーと言う最下級に扱われる身分の中で、死のゲームをやらされる。 が、その時神からのギフトが下る。 スキルを得て、死にそうな目にあいながらも、生きぬいてゆく。 幼馴染との恋の行方は? もがきながらも、強く生きて行こうとする一人の女性の物語です。

そんなに悲劇のヒロインぶりたいなら手伝ってさしあげます

mios
恋愛
人の良い悪役令嬢が、自称ヒロインに自分を苛めるように言われて、そう言う特殊な性癖の方だと勘違いしたまま、学園総出でお手伝いした話。 12話完結+転生者それぞれの話+その後 *ツッコミ所はたくさんあると思いますが、生温かい目で読んでいただけるとありがたいです。 *21話で終了予定でしたが、マリィの今後を書きたくなったため、すこし続きます。 第二部はシスコン(若干)の話です。

ボロボロになった心

空宇海
恋愛
付き合ってそろそろ3年の彼氏が居る 彼氏は浮気して謝っての繰り返し もう、私の心が限界だった。 心がボロボロで もう、疲れたよ… 彼のためにって思ってやってきたのに… それが、彼を苦しめてた。 だからさよなら… 私はまた、懲りずに新しい恋をした ※初めから書きなおしました。

悪役令嬢は可愛いものがお好き

梓弓
恋愛
『前世にプレイした乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました……。 例に漏れず、最終的には悪事を糾弾されて死亡するというキャラ。 でもそんなのはごめんです! ヒロインをいじめるつもりはありません。 引きこもります。 前世の趣味は、ゲーム、読書、モノ作りというインドアな乙女でしたから、問題無しです!』 悪役令嬢として生を受けた少女が、死亡フラグを回避するために引きこもります。 しかし、自分の趣味に邁進するにつれて何故か周りを巻き込んで行き、避けていたヒロインや攻略キャラとも関わりができてしまいます。 果たして、シオンに平穏な日々は訪れるのでしょうか……?

処理中です...