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ぼへ~っとしながら身支度を整え、食堂へ。
いつもの面子がいたので、
「座るよ」
と声を掛けて席へ着く。
「よう、ハウウェル。家はどうだった? おにーさんに構われた?」
ニヤニヤ笑うテッド。
「……今回は、おばあ様とまったりな感じ?」
「おー、あの、ダンス中に男の足に穴を空けてやろうと狙ってる怖いばーちゃんなー。つか、そんな怖いばーちゃんとまったりなんかできんの?」
「……人のおばあ様に失礼なこと言わない。それはダンス中、気の利かない男に限りだよ。あと、さすがに穴は空けないから」
うん。お祖父様の足に穴は無い。
「ふーん……で、ばーちゃん家に遊びに行ったん?」
「? 遊びに? ・・・ああ、わたしは、帰省するときには実家の方じゃなくて、お祖父様の家に帰っているんだよ」
テッドの言葉に一瞬きょとんとして、普通は帰ると言えば大抵は両親のところへ帰るものだと思い至った。わたしは、その大抵の部分からは洩れる子だ。
「ぁ~、その、悪ぃ。ハウウェル」
わたしが両親と折り合いが悪いということを思い出したのか、しまった……という顔で謝るテッド。
「ああ、別に気にしてないからいいよ」
まぁ、わたしの他にも、事情があって実家に帰らない子はいるし。
「そんなことより、レザン」
「うん? なんだ?」
「暫くは放課後、君と行動させてもらうから」
「うむ。いいだろう」
と、快諾。よし、アルレ嬢避けはこれでOK。
「ど、どうしたよハウウェル! なんか悪いもんでも食ったかっ!?」
なぜか驚くテッド。
「……実はまだ寝惚けているのか?」
そして、ぼそりと失礼なこと言うリール。
「変な物も食べてないし、寝惚けてもいないよ」
「だってお前、噂が嫌だからあんまり近寄るなってレザンに言ってただろうが?」
「や、わたしはそんなこと言った覚えはないんだけど?」
多分、口に出してはいなかった筈だ。
「いーや、ハウウェルの態度がそれを物語っている!」
「態度って・・・」
まぁ、間違ってはいないけど。でも、噂よりもアルレ嬢の勧誘の方が嫌だから仕方ない。
「そんなハウウェルが前言を撤回してレザンと行動したがるなんて絶対おかしい! さあ、なにがあったか言えっ!?」
「や、だから、わたしそんなこと言ってないんだってば。でも、そうだね・・・君達、アルレ嬢って先輩のこと知ってる?」
「アルレ嬢? なっ!? お前まさか女の子の突撃避ける為にレザンを利用する気かっ!? なんて非道なことをするんだこの野郎っ!? レザンみたいな強面イケメンを当てられたら繊細な女の子が可哀想じゃねぇかっ!?」
なんか、怒鳴られた。
「……アルレっていうのは確か、関わるとあんまりよくない先輩じゃなかったか?」
「はあっ?」
ぎろりとリールを睨むテッド。
「確か、男子生徒に声を掛けて回っている男好きの先輩で、彼女と親しくして成績がガタ落ちして、上位クラスを落とされた男子が何名もいるらしい。馴れ馴れしく話し掛けて来る女子の先輩には気を付けろ、と言われている」
アルレ嬢。上位クラスで気を付けろと言われるようになるまで、男子生徒を数々誑かしていたとは。仕事熱心だと言えばいいのか、難あり子息が多いと思えばいいのか・・・
「え? マジ?」
「ああ。上位クラスの男子の間では有名な話だ」
「・・・ハウウェル、成績普通じゃん」
「彼女は、貴族子息達に声を掛けることでも有名だよ」
「・・・あ、顔と家のことで狙われてんのか?」
「まぁ、多分そんな感じ」
「……アルレって女子の先輩と仲良くすると、成績が落ちるらしいぞ。ハウウェルも気を付けろ」
「うん。だから、そのアルレ嬢避けにレザンと一緒にいるんだって」
「成る程なー。純粋に好意を寄せてくれるような女の子じゃない、と」
どこかしょんぼりしたようなテッド。
というか、純粋って・・・アルレ嬢とは真逆じゃないですかねぇ? あの人は、明確に腹黒いと思います。性格もそこそこ悪そうですし。
テッドって、結構辛辣なこと言ったりする割に、どこか女性に夢見てるところがあるよね。
「まあ、困っているのなら力になるぞ。遠慮なく頼るといい」
と、レザンが男前な返事をくれた。
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