虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 うんざりする渋滞を越え、ようやくうちに着いたのは、すっかり日が落ちてからのこと。

 馬車が止まったと思ったら、バン! と勢いよくドアが開いた。

「お帰りネイトっ!?」
「た、ただいま」

 ちょっとびっくりした。

「今日は迎えに行けなくてごめんね? ネイトが帰って来るって知ってたら、予定をこじ開けてたのになぁ・・・」
「ううん、いいよ別に。気にしないで」

 ……というか、セディーはもっと自分の用事とかを優先した方がいいと思う。

「急に帰って来たいって、どうしたの? ネイトも寂しくなっちゃった? 僕もネイトがいなくて寂しかったんだよ」

 と、ぎゅ~っとハグをされた。相変わらず、セディーは熱烈だ。

「はいはい、セディーが寂しかったのはわかってるから、そろそろ中にお入りなさいな。きっと、ネイトはお腹を空かせているわよ」

 と、手を叩くおばあ様に促されて家に入り、遅めの夕食をとって一息吐いた頃。

「お祖父様にお話があるんですけど」

 と、切り出した。

「え~? お祖父様にお話なの?」

 不満そうに言うセディーに、

「ふっ、ネイトはわたしに用があって帰って来たのだ。どうだ、羨ましかろう?」

 ニヤリと勝ち誇った顔で笑うお祖父様。

 大人げないですね……

「っ、お祖父様……ネイト、僕には話せない話なの?」

 一瞬悔しそうな顔をして、わたしの方に顔を向けたときには悲しげな顔をするセディー。

「話せないっていうか……」

 セディーにも、話した方がいいのか・・・

 一応、わたしの今一番の懸念が、両親あの人達なんだよね。わたし、まだ未成年だし。勝手に軍の入隊許可証を書かれでもしたら堪らない。

 両親あの人達なら、そういうことをやりかねないのがなんとも言えないよねぇ。わたしを勝手に騎士学校に入れたという前科もあることですし。

「実は・・・軍の諜報部にスカウトされちゃって」
「は? ネイト? ・・・ちょっとそれどういうことっ!?」

 ガっとわたしの両肩を掴んで詰め寄るセディー。

「落ち着きなさい、セディー」

 お祖父様の低い声。

「それで、どういうことだ? ネイト」
「まぁ、なんというか・・・わたしの顔と、経歴に目を付けられたみたいです」

 多分、顔だけならアルレ嬢に目を付けられることもなかったと思う。

「騎士学校か・・・」

 お祖父様の顔が、嫌そうに顰められました。

「・・・お祖父様」

 低い声でセディーがお祖父様へ顔を向け、

「今すぐ僕に爵位を譲ってくれませんか?」

 にっこりと微笑んで言った。

「軍の方に、ちょっと抗議をしに行こうと思いますので」
「は? ちょっ、なに言ってるのセディーっ!?」
「? ほら、爵位があった方が抗議が通り易いと思うから」
「やめてよねっ!?」
「全く、なにを言い出すかと思えば……アホか。少しは落ち着きなさい、セディー。ちなみに、爵位はまだやらん。ネイトが嫌だと言えば、それで済む話だろう」

 溜め息を吐いたお祖父様は、残念な子を見るような視線をセディーに向ける。

 まぁ、うん・・・ちょっと錯乱気味だよね。

「っ!? ね、ネイトはどうしたいのっ!?」
「ああ、わたしは」
「諜報活動なんてそんな危ないことしないよねっ!?」


__________


 セディー錯乱中。(笑)
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