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しおりを挟む「大丈夫か? ハウウェル」
「なんか、どっと疲れた。それにしても……レザンは、アルレ嬢に驚いてないんだね」
見上げると、
「うむ。まぁ、王族、公爵、侯爵、辺境伯など、高位の貴族関係者が通う学園だからな。ある程度、国の者が紛れ込んでいるのは当然だろう。それに、アルレはそういう商人の家というのは元々知っていたからな」
平然と頷かれた。
ということは、レザンと同じく、代々軍属の家のお嬢さんだったワケですか。公にしてなくて、外交的に難しい国と取り引きをしている商家、というのを隠れ蓑にした。
それなら、あのなんとも言えないアルレ嬢の評判でも退学にならないのも当然というか・・・
学園側も知っていて彼女を受け入れているのか、それとも退学にならないギリギリのラインを、彼女や諜報部が弁えているのか、はたまた諜報部自体がアルレ嬢の退学を問題としないのか・・・
なんだか、闇が深そうなので、これ以上考えるのはやめておきましょう。
とりあえず、お祖父様に要相談案件ですねぇ。
軍の諜報部にスカウトされたと言ったら、セディーがなんて言うか・・・
「それで、ハウウェルはどうするつもりなんだ?」
じっとわたしを見下ろすレザン。その表情が、どこか心配そうに見える。
「はぁ・・・勿論、さっきも言った通り、お断りするに決まってるよ」
「そうか。では、今日はどうする?」
「ぁ~、今日は・・・」
とりあえず、むしゃくしゃはしている。
けど、お祖父様に手紙を書くのが先かな?
「一旦部屋に戻ってから、どうするか決める」
「そうか。では後でな」
「うん」
と、レザンと別れて寮へと向かう。
手紙は、検閲される可能性が捨て切れないので……余計なことは書かず、『今週は是非とも帰りたいので、迎えに来てください』とだけ書いて、速達で出してもらった。
それから、乗馬をしに行って、夕食の時間ギリギリまで爆走させた。
馬場からの帰り道。
「なーんか、今日機嫌悪くね? ハウウェルどうしたん?」
と、テッドがわたしを覗き込む。
「どうっていうか……さっき……」
まぁ、アルレ嬢に絡まれた内容は、絶対に話せないよねぇ・・・
「さっき、なんだ? どしたよ?」
「・・・顔のことで、絡まれたっていうか」
ある意味、間違ってはいないと思う。
「え? マジでっ? まーだハウウェルに絡む強者がいたのかっ?」
「ちょっと、それどういう意味?」
ムッとして聞き返すと、
「え~、だって今のハウウェル、高等部の有名人じゃん。絡んだ側が不幸になるって恐れられててさー? あ~、あれか? 今日はレザンとペアじゃなかったり? それだったらなー。お前ら二人組に絡むと、って話だもんなー?」
なんとも言えない答えが・・・
「・・確かに、一人だったけど・・・」
まさか、アルレ嬢が諜報部の見習いで、わたしを後釜にすべく虎視眈々と狙っていたとは・・・
まだ、玉の輿狙いの少し頭の足りない感じのお嬢さんだった方がかなりマシだよ。
「やっぱなー。ま、やけ食いなら付き合ってやるからよ。元気出せって!」
「うむ。デザートを一つ進呈しようではないか」
なんかレザンに気を遣われているっ!?
「・・・まぁ、そういうことなら遠慮なく」
と、そこそこ夕食を食べた。
レザンに一番高いスイーツを奢ってもらった。
特盛のパフェが美味しかった。人の奢りだと思うと、なんで余計に美味しく感じるのかな♪
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