231 / 673
213
しおりを挟む「あれは退学じゃなくて、転校」
「や、学校から消えんのは一緒じゃん。理由知らねー奴からしたら、いきなり消えんだから、大して変わんねーって」
ひらひらと手を振って、わたしの言葉を一蹴。
一応、自己陶酔男は質は悪かったけど、まだ犯罪者ではなかったんだけどね。セルビア嬢は、非常に嫌っていたようですが。
「んで、デカくて目付きの悪い奴と、女顔の綺麗な一年男子のコンビに絡むと不幸になるから気を付けろ! って噂が出ているらしい」
「……見事に、不幸になった奴ばかりだな。前期だけで既に六名、か」
「お前ら二人、ある意味有名人だな」
ハハハと笑うテッド。
「わたしは、別に・・・好きで絡まれてるワケじゃないんだけど」
それに、わたしが退学やら転校をさせたワケじゃない。退学を決めたのは学園だし、転校を決めたのは彼らの保護者だ。
「そりゃあまぁ、わたしが要因の一つかもしれないけど……基本的には、彼らの自業自得でしょ」
「うむ。ハウウェルは、こちらから手を出さなければ誰彼構わず噛み付くようなことはしないぞ」
「わたしは猛獣か」
「やー、実はハウウェル、見た目に似合わずなかなかキレっ早いぞ?」
「……確か、気性の荒さは祖母譲りという話だったな」
わたしは、おばあ様程じゃないと思います。なんか、言うとコワそうなので直接は言いませんが。
「まあ、変な輩が消えて、学園が平和になったと思えばいいではないか」
からりと笑うレザン。
それから暫くして――――
ニヤニヤしたテッドに、
「一年には『綺麗な顔をした女顔の悪魔』がいるらしいぜ。誰のことだろうなー?」
という噂を聞かされて、思わずイラッとした。
「誰がっ……『女顔の悪魔』だっ!?」
全く以て失礼千万な噂だなっ!!!!
「落ち着け、ハウウェル。向こうにいたときみたいに、姫呼ばわりじゃないだけマシだろう」
と、レザンに宥められたけど……
「え? なにハウウェル、向こうで姫呼ばわりされてたのっ!? マジでっ!?」
プッ!? と吹き出したテッドを睨み、
「……誰が、姫だ……誰がっ!」
深く深呼吸。
「……テッド、表出ろやこの野郎っ」
「い、いや、なんか顔が怖いぞハウウェルっ!?」
テッドの肩を掴もうと手を伸ばしたした瞬間、
「落ち着け、ハウウェル」
後ろから羽交い締めにされた。
「っ!? 放せレザンっ!」
「相手は一般人だ。どうしてもというなら、俺が相手になってやる。テッド、俺の部屋から木剣を二振り取って来い」
と、鍵を投げたレザンに引き摺られて外へ。鍵をキャッチしたテッドが走って行くのが見えた。
それから、テッドが慌てて持って来た木剣で、久々にレザンと思いっ切り打ち合った。
数日間は身体がガタガタになったけど、ちょっとはスッキリした。
久々に『姫』呼ばわりされて、思わず冷静さを欠いてキレてしまった。あの頃は、『腹黒姫』呼ばわりした連中とは片っ端から拳で語ってやめさせていたからなぁ……
テッドにドン引きされて、
「ハウウェルをからかうのは程々にしとくわ」
と、引き攣った青い顔で言われた。
ドン引きしている割りには、わたしを揶揄うことはやめないらしい。
なんだかんだ、テッドも図太いよね。
✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰
22
お気に入りに追加
749
あなたにおすすめの小説

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

これは一周目です。二周目はありません。
基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。
もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。
そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる