虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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「あれは退学じゃなくて、転校」
「や、学校から消えんのは一緒じゃん。理由知らねー奴からしたら、いきなり消えんだから、大して変わんねーって」

 ひらひらと手を振って、わたしの言葉を一蹴。

 一応、自己陶酔男は質は悪かったけど、まだ犯罪者ではなかったんだけどね。セルビア嬢は、非常に嫌っていたようですが。

「んで、デカくて目付きの悪い奴と、女顔の綺麗な一年男子のコンビに絡むと不幸になるから気を付けろ! って噂が出ているらしい」
「……見事に、不幸になった奴ばかりだな。前期だけで既に六名、か」
「お前ら二人、ある意味有名人だな」

 ハハハと笑うテッド。

「わたしは、別に・・・好きで絡まれてるワケじゃないんだけど」

 それに、わたしが退学やら転校をさせたワケじゃない。退学を決めたのは学園だし、転校を決めたのは彼らの保護者だ。

「そりゃあまぁ、わたしが要因の一つかもしれないけど……基本的には、彼らの自業自得でしょ」
「うむ。ハウウェルは、こちらから手を出さなければ誰彼構わず噛み付くようなことはしないぞ」
「わたしは猛獣か」
「やー、実はハウウェル、見た目に似合わずなかなかキレっ早いぞ?」
「……確か、気性の荒さは祖母譲りという話だったな」

 わたしは、おばあ様程じゃないと思います。なんか、言うとコワそうなので直接は言いませんが。

「まあ、変な輩が消えて、学園が平和になったと思えばいいではないか」

 からりと笑うレザン。

 それからしばらくして――――

 ニヤニヤしたテッドに、

「一年には『綺麗な顔をした女顔の悪魔』がいるらしいぜ。誰のことだろうなー?」

 という噂を聞かされて、思わずイラッとした。

「誰がっ……『女顔の悪魔』だっ!?」

 全くもって失礼千万な噂だなっ!!!!

「落ち着け、ハウウェル。向こうにいたときみたいに、姫呼ばわりじゃないだけマシだろう」

 と、レザンに宥められたけど……

「え? なにハウウェル、向こうで姫呼ばわりされてたのっ!? マジでっ!?」

 プッ!? と吹き出したテッドを睨み、

「……誰が、姫だ……誰がっ!」

 深く深呼吸。

「……テッド、表出ろやこの野郎っわたしと、じっくり外で話し合おうか?
「い、いや、なんか顔が怖いぞハウウェルっ!?」

 テッドの肩を掴もうと手を伸ばしたした瞬間、

「落ち着け、ハウウェル」

 後ろから羽交い締めにされた。

「っ!? 放せレザンっ!」
「相手は一般人だ。どうしてもというなら、俺が相手になってやる。テッド、俺の部屋から木剣を二振り取って来い」

 と、鍵を投げたレザンに引き摺られて外へ。鍵をキャッチしたテッドが走って行くのが見えた。

 それから、テッドが慌てて持って来た木剣で、久々にレザンと思いっ切り打ち合った。

 数日間は身体がガタガタになったけど、ちょっとはスッキリした。

 久々に『姫』呼ばわりされて、思わず冷静さを欠いてキレてしまった。あの頃は、『腹黒姫』呼ばわりした連中とは片っ端から拳で語って話し合ってやめさせていたからなぁ……

 テッドにドン引きされて、

「ハウウェルをからかうのは程々にしとくわ」

 と、引きった青い顔で言われた。

 ドン引きしている割りには、わたしを揶揄からかうことはやめないらしい。

 なんだかんだ、テッドも図太いよね。

✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰

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