虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 あ、思考投げたなコイツ。

 それから、レザンが食事を終えるのを、わたしも朝食を食べながら待ち――――

「とりあえず、寮宛になにか荷物が届いてないか確認してみたら?」

 レザンが何日も掛けて移動していたなら、宅配便の方が先に寮に届いている可能性もある。

 うちなら、わたしが忘れ物をしたら届けてくれると思うし・・・セディーなら、学園まで直に届けてくれそうな気もする。

「今すぐとんぼ返りして、もし行き違いになってもあれだしさ?」
「ハハハっ……はぁ~、笑ったぁ……そうだな。行ってみようぜ!」
「うむ。わかった」

 と、寮のラウンジに移動。レザン・クロフト宛の荷物が来ていないか確認したところ・・・

「あったっ!?」

 なにやらずっしりと重い小包が届いていたようだ。

 レザンがそれを慌てて開封すると、教科書一式と出されていた課題が出て来た。

「おー、よかったなレザン」
「うむ。焦った・・・危うく、学園の馬を借りて、潰す勢いで往復しなくてはいけないかと思ったぞ」

 珍しく、レザンの安堵したような深い溜め息。

「んなことにしたら馬かわいそーじゃん」
「というか、授業再開で来てるのに、教科書一式を忘れることの方が信じられないよ」

 うんうんと頷き、レザンを見やるとそっと視線を逸らされた。一応、やらかしたという自覚はあるらしい。その手には、『おバカさん』とだけ書かれた手紙が握られている。まぁ、その通りだよねぇ。

「そう言やぁさ、宿題難しくなかったか? 俺、幾つか空白んとこあるんだけどさ。ハウウェルは宿題全部やったん?」
「ああ、うん。わたしは、わからないところはセディーが教えてくれたから大丈夫」
「おー、あのブラコンのおにーさんなー? 確か、すっげー頭いいんだっけ?」
「うん」
「よし、うらやましいから見せろ」
「は?」
「っつーワケで、今からリールも呼んで、みんなで宿題の答え合わせしようぜ!」

 と、リールの部屋に押し掛けて嫌がるリールを無理矢理引っ張り出し、課題の答え合わせをすることになった。

「……全く、なんで俺が……」

 迷惑そうにぶつぶつと呟くリールに、

「ふっ、答え合わせは休み明けの恒例だろ?」

 なぜか胸を張り、

「できない奴ができる奴に迷惑を掛けるのは!」

 堂々とアホなことをのたまった。

「・・・威張って、言うことかこのアホがっ!?」

 さすがにリールも怒ったのか、声を荒らげた。 

「まあまあ、そう怒んなって。一応、この答え合わせは、多分リールにも得はあるんだって」
「俺になんの得があると?」
「リールも、ハウウェルのおにーさんが頭良いのは知ってるよな? ライアン先輩に勉強教えてたっていうし、教え方のお手本にしたって本人も言ってただろ?」
「……ぁ、ああ」

 チラッとわたしへ視線を寄越し、顔を赤らめるリール。まだ慣れてないのか・・・

「その、ハウウェルのおにーさんが、ハウウェルに教えた宿題が見られる!」
「・・・」

 無言のリールに、

「聞いて驚け! ハウウェルのおにーさんはな、ノートをろくすっぽ取らなかったクセして、在学中は常に上位クラスで好成績をキープしていた、すっごい人なんだぞ!」

 ふふんと威張るテッド。なんで君が威張るのか・・・まぁ、セディーが誉められて、悪い気はしないんだけどね。

「……よし、いいだろう」
「・・・あのさ、わたしの許可は?」
「あ? オッケーすんだろ? ハウウェルはさ」
「君ってば、かなりちゃっかりしてるよね? 全く」
「おう、誉め言葉として受け取っておくぜ」

 にかっと笑うテッド。

 そして、課題の答え合わせをすることになった。

「いやー、助かるぜー」
「うむ。感謝する」
「……言っておくが、丸写しは駄目だからな?」
「わかってるわかってる」
「うむ」
「・・・わたし暇じゃん」
「ふっ、暇なら俺達に教えてくれてもいいんだぜ?」
「偉そうに言うな」


__________



 『お城で愛玩動物を飼う方法~わたくしの小鳥さん達~』が完結しました。

 王子に婚約解消を切り出された令嬢が、これ幸いと王子に忠告を残して、小鳥さん達と出奔する話。9千文字ちょいの短編です。興味のある方は覗いてやってください。


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