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なんだかんだとセディーに構われ、ある意味勉強やら貴族家のあれこれを叩き込まれ、学園で出された課題をこなして――――
気付けば、そろそろ長期休暇が終わりです。
四日後には学園が再開します。というワケで、学園に向かう準備中、なんだけど・・・
「ネイト~」
セディーが今から泣きそうだ。
「ん? なぁに? セディー」
「・・・寮に行くのやめて、うちから通わない?」
じっとわたしを見詰める、潤んだブラウンの瞳。
「や、それはさすがにね」
学園から馬車で何時間掛かると思っているのか・・・というか、自分も寮に入っていたというのに。
「毎日馬に乗って通えばいいんじゃないかな? ほら、ネイトは乗馬好きでしょ?」
「それは通学が大変だから。マジで」
馬車で行くよりは、乗馬して行った方が時間は短くなるとは思う。でも、体力的に厳しい。
早起きして馬に乗って通うとなると、授業を受ける頃にはへばっていること確実だ。
あと、絶対に汗臭いことになるだろう。乗馬は全身運動だというのに。そして、悪天候の日はどうしろというのか?
普通に却下だ。
「・・・判ってる。けど、ちょっと言ってみただけ、だから・・・」
つまらなさそうな顔でそっぽを向くセディー。
や、今のは結構目がガチだったような気がするんだけど?
「はぁぁ~」
と、今度は深い溜め息。
「・・・寂しい。明日から、またネイトがいない」
本当に寂しそうな声と表情。
まぁ、あれだよねぇ。
実は、わたしとセディーがこんなに長い期間一緒に過ごしたのは、初めてなんだよね。
小さい頃は、セディーと遊ぶのは夜のちょっとの時間だった。その後には、わたしが隣国のクロシェン家に預けられた。隣国から帰って来てからは、セディーは学園に通っていて時間が合わなかった。更にその後わたしは、騎士学校に入れられた。卒業してから学園に入学するまでは、勉強漬けだったし・・・
セディーと時間をあんまり気にしないで自由に遊んだのは、この長期休暇が初めてのこと。
考えてみれば・・・本当にわたし達兄弟は、一緒に過ごした時間が少ない。
まぁ、セディーの当主教育がどうなっているのかはとても気になっていたけど。「全然大丈夫だから、ネイトは気にしなくていいよ?」と、イイ笑顔で言われて、遠慮すると「ネイトは、僕と一緒にいたくない?」と、それはそれは悲しそうな顔をするんだから・・・
わたしがセディーの悲しそうな顔に弱いと知っていて、そんな風に問い掛けるんだから、セディーはちょっと卑怯だと思う。
長期休暇の間、大事な用以外ではセディーがわたしにべったりなことに関しては、お祖父様もおばあ様もなにも言わないで笑って見ていたし・・・
あれはあれで、セディーの当主教育が遅れるのを歓迎しているのか、それとも教育が順調でなにも言うことがないのか、判断に迷うところだ。
「もう、そんな顔しないの。会えなくなるワケじゃないんだから。休みのときには帰って来るってば」
「・・・うん」
不満そうに頷いて、セディーはわたしの準備を手伝ってくれた。
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