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帰省ラッシュの長い長い渋滞を越え、家に着いた頃には一日が潰れてしまいました。
始めの数日間を家でだらだら過ごした後は――――
張り切ったセディーに勉強を詰め込まれ・・・
いや、あの、喧嘩売って来るアホ共の顔を覚えていないというか、覚えるに値しないから覚えていないだけで、わたしは多分、そんなにアホの子ではないと思うんですけど・・・?
まぁ、心配掛けたくないから言わないけど。
あと、わたしの頭がちょっと残念な感じじゃなくて、セディーの頭が良いんだと思います。
そんな感じで勉強をしつつ、おばあ様やセディーに連れられてあちこちのお茶会に参加したり、合間に息抜きで馬を借りて遠乗りをしたりと過ごして――――
綺麗な庭園のあるお宅のとあるお茶会で。
ぱたぱたと軽い足音がして、
「リヒャルト、走ってはダメですよ」
聞き覚えのある声がしたと思ったら、
「ゎぷっ!?」
背後からトンと、軽いなにかにぶつかられた。
「?」
振り返ると、小さな男の子がびっくりした顔で尻もちを着いていた。ぶつかって来たのはこの子かと思いながらしゃがみ込んで男の子を立たせ、ぽんぽんとズボンを払う。
「大丈夫ですか? 多分怪我はなさそうですが、痛いところはないですか?」
泣いてはいないから、大丈夫だと思うけど。
「っ!? はいっ、あ、その……ごめんなさい」
恥ずかしそうに顔を赤くして謝る男の子が、
「あの、おけがやいたいところはないですか? おねえさまは」
わたしを見上げて言った。
「・・・ええ。大丈夫ですよ。わたしも君と同じ、男の子ですからね」
うん。相手は小さな男の子。勘違いしているだけだ。悪意は無い。悪意は全く無い・・・のが、なんかちょっといたたまれない気がするけどっ!
「?」
きょとんと男の子が首を傾げたとき、
「す、すみません! 弟がなにか失礼をしてしまったでしょうかっ!?」
慌てたように現れたのは・・・
「セルビア嬢」
先程の聞き覚えのある声はセルビア嬢でしたか。
「! ハウウェル様でしたか。すみません、弟がなにをしてしまいしましたか?」
おろおろと心配そうな顔で、わたしと弟さんとを見比べるセルビア嬢。
「ああ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。ちょっとぶつかってしまっただけです。弟さんは多分、怪我もしていないと思いますけど、後で一応痛いところがないかを聞いてあげてください」
「すみませんでした。ハウウェル様の方こそ、お怪我はありませんか?」
「ええ。わたしも怪我はありませんので」
「?? ケイトねえさまのおしりあいのかたですか? ねえさまのおともだちのおねえさま?」
「っ!? す、すみませんハウウェル様! リヒャルト、いいですか? ハウウェル様はとてもお綺麗なお顔をしていますが、女性ではなくて男性なのですよ」
真剣な顔で弟さん……リヒャルト君へと言い聞かせるセルビア嬢。
でも、とてもお綺麗なお顔って・・・
「だんせー?」
きょとんと、セルビア嬢とわたしとを見比べるリヒャルト君。
「ええ。わたしは男の子ですよ。君と同じです」
「すみません、本当に申し訳ありません。その、わたしはよく乗馬服で過ごすので・・・」
リヒャルト君の中では女性イコール、スカート姿とは限らないということですか。
「いえ、大丈夫ですのでお気になさらず」
うん。大丈夫です。ちょっと悲しいけど・・・
「ネイトー、どうかした、の?」
「あ、セディー」
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