虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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「さて、交流会が開始されましたが、ハウウェル様はどうされますか?」
「そうですねぇ……」
「開会の挨拶も済みましたからね。セディック様のようになさっても結構ですよ?」

 それは、セディーがしていたように、途中退場やエスコートの放棄をしても構わないということですか。けど、さすがに会場入りしてすぐに解散というのもどうかと思いますし・・・

「セルビア嬢は、どうしたいですか?」
「わたし、ですか?」

 驚いたように瞬くセルビア嬢。

「ええ。折角のパートナーなので。もう少しお付き合いさせてください」

 というか、まぁ、まだ婚約者が決まっていない人達の中には、いい人見付けるぞ! という意気込みで参加している人も多いそうですからねぇ・・・あれだ。獲物を狩るかの如くギラギラした目付きをした女子生徒が若干コワい気がするので、まだ離れないでくれると嬉しいです!!

 わたし、人の話を聞かない女性は苦手なんですよねぇ・・・誰かさん・・・・を思い出すので。

「では、軽食など如何いかがでしょうか? 交流会にしか出ないスイーツがあるのですよ。甘い物がお嫌いでないなら是非」
「それは楽しみですね。行きましょうか」

 と、向かった軽食コーナーには……なにやらデカくて目付きの悪い奴が、もりもりとテーブルの料理を食べ捲っていた。そして、周囲から浮き捲っている。

「おお、ハウウェルにセルビア副部長」
「クロフト様……美味しいですか?」

 声を掛けられたセルビア嬢が苦笑する。

「はい。寮で出る食事とはまた違って、美味しいですね。まぁ、強いて言うなら、一皿の分量が少ないように感じますが」
「そりゃ、立食パーティーだからね。美味しいのはわかったけど、君一人でこのテーブルの料理を食い尽くす気?」
「うん? いや、リールもそこにいるぞ?」

 と、背後を指すレザン。彼の後ろには、

「っ!?」

 皿を持ってビクッと慌てた様子のリールがいた。

「あら、そちらの方は初めまして、ですね。わたしはケイト・セルビア。高等部の二年生で、乗馬クラブの副部長をしております。ハウウェル様達とは、乗馬クラブでお知り合いになりました」
「なっ!? ・・・そ、その、は、はじめまして」

 にこりと微笑んだセルビア嬢に挨拶され、顔を真っ赤にするリール。そういえばリールって、女性が苦手だったっけ?
 最近はいつもぼそっと失礼なことばかり言ってるから忘れてたけど。確か、わたしとの初対面でもこんな感じだったなぁ。

「こちらはわたしの友人でリール・グレイ。一年の特待生なんです」
「あら、それは凄いですね。グレイ様はとても優秀なのですね」
「そっ、そんな、ことは……そのっ、平民。なので、グレイ、とお呼びください……」

 ぼそぼそと告げるリール。

「では、グレイさんで宜しいでしょうか?」

 無言でこくこく頷くリール。

「ハッ、下級生を侍らせていいご身分だな? 婚約解消された嫁の貰い手の無い女が」

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