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しおりを挟む「・・・あの、セルビア嬢?」
なんで彼女がわたしにそんなことを言い出したのかが、わからない。
「はい。わかっています。要らぬお節介でしたら、断って頂いても結構ですよ?」
「い、いえ。そうではなくて! そんなの、わたしに有利なばかりでセルビア嬢にはなんの得も無いではないですか!」
「ふふっ、やはりハウウェル様はお優しいのですね。実はわたし、同年代の殿方達には、かなり受けが悪いのですよ。伯爵家の当主となるべく育てられましたので。わたしはこの通り、女だてらに鞭を振り回して馬にも乗りますし。騎士養成学校で本格的に習っていた方へ言うのもなんですが……有事の際の為にと、剣だって少しは扱えるのですよ? どちらかと言うと、剣よりは鞭の方が得意なのですけどね」
微笑みを浮かべながら言い募るセルビア嬢。
「女で伯爵になるのだからと、殿方に負けるなと言われて来ました。最初は剣も馬も、女にはできないだろうと笑われました。それで努力して色々と頑張ってできるようになれば、女のクセに生意気で可愛げが無いと言われました。そして弟が生まれると、当主にならなくていいと言われました。すると、伯爵家の当主とならないのなら、わたしのような冷徹な女とは結婚したくないと、婚約を解消されました。それからは、気の強い、男勝りで賢しらな女は嫁の貰い手が無いと言われています。そんなわたしに、ハウウェル様は……殿方よりも乗馬が上手いのは素敵なことだと、それで女性的な魅力が下がることはない、と。そんな風に言ってもらえて……とても嬉しかったのですよ。わたしは」
確かに、以前にそんなことを言った覚えはあります。乗馬クラブに顔を出し始めた頃のこと。
「ぉー、ハウウェルやるー」
「どうするんだ? ハウウェル」
軽口を叩くテッドに、探るようにわたしを見下ろすレザン。
そりゃあもう、女性にここまで言わせてしまったのだから・・・
「・・・わたしと、交流会に出て頂けますか? セルビア嬢」
と差し出した手に、
「ええ、喜んで」
セルビア嬢の手が重ねられました。
「ちなみにですが、わたしは個人的には、凛々しい女性は素敵だと思いますよ?」
お祖父様がおばあ様を見初めたときの武勇伝(しつこい令息扇子張り倒し事件など)も、とてもかっこいいと思っていますし。
「ふふっ、ありがとうございます。お世辞でもそう言って頂けて、嬉しく思います」
お世辞じゃなくて、凛々しいセルビア嬢のファンは実際には結構たくさんいると思います。『ケイト様を見守る会』だとか隠れファン? の方々を筆頭にして・・・
それにしても、彼らはなぜセルビア嬢を交流会などのイベント事に誘わないのでしょうか?
彼らがセルビア嬢をお誘いしていれば、セルビア嬢が男子生徒に受けが悪いと思うようなこともなかったのかもしれないのに・・・
謎ですねぇ?
__________
ケイトさんは面倒見のいい男前女子なので、実はファンは結構いたりします。
Q.『ケイト様を見守る会』の会員が、なぜケイトさんをお誘いしないのか?
A.彼らは心情的にケイトさんの下にいたいという感じの人達なので、ケイトさんの隣に並ぶのは畏れ多かったから。
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