虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
205 / 673

187

しおりを挟む


「・・・あの、セルビア嬢?」

 なんで彼女がわたしにそんなことを言い出したのかが、わからない。

「はい。わかっています。要らぬお節介でしたら、断って頂いても結構ですよ?」
「い、いえ。そうではなくて! そんなの、わたしに有利なばかりでセルビア嬢にはなんの得も無いではないですか!」
「ふふっ、やはりハウウェル様はお優しいのですね。実はわたし、同年代の殿方達には、かなり受けが悪いのですよ。伯爵家の当主となるべく育てられましたので。わたしはこの通り、女だてらにムチを振り回して馬にも乗りますし。騎士養成学校で本格的に習っていた方へ言うのもなんですが……有事の際の為にと、剣だって少しは扱えるのですよ? どちらかと言うと、剣よりは鞭の方が得意なのですけどね」

 微笑みを浮かべながら言い募るセルビア嬢。

「女で伯爵になるのだからと、殿方に負けるなと言われて来ました。最初は剣も馬も、女にはできないだろうと笑われました。それで努力して色々と頑張ってできるようになれば、女のクセに生意気で可愛げが無いと言われました。そして弟が生まれると、当主にならなくていいと言われました。すると、伯爵家の当主とならないのなら、わたしのような冷徹な女とは結婚したくないと、婚約を解消されました。それからは、気の強い、男勝りで賢しらな女は嫁の貰い手が無いと言われています。そんなわたしに、ハウウェル様は……殿方よりも乗馬が上手いのは素敵なことだと、それで女性的な魅力が下がることはない、と。そんな風に言ってもらえて……とても嬉しかったのですよ。わたしは」

 確かに、以前にそんなことを言った覚えはあります。乗馬クラブに顔を出し始めた頃のこと。

「ぉー、ハウウェルやるー」
「どうするんだ? ハウウェル」

 軽口を叩くテッドに、探るようにわたしを見下ろすレザン。

 そりゃあもう、女性にここまで言わせてしまったのだから・・・

「・・・わたしと、交流会に出て頂けますか? セルビア嬢」

 と差し出した手に、

「ええ、喜んで」

 セルビア嬢の手が重ねられました。

「ちなみにですが、わたしは個人的には、凛々しい女性は素敵だと思いますよ?」

 お祖父様がおばあ様を見初めたときの武勇伝(しつこい令息扇子張り倒し事件など)も、とてもかっこいいと思っていますし。

「ふふっ、ありがとうございます。お世辞でもそう言って頂けて、嬉しく思います」

 お世辞じゃなくて、凛々しいセルビア嬢のファンは実際には結構たくさんいると思います。『ケイト様を見守る会』だとか隠れファン? の方々を筆頭にして・・・

 それにしても、彼らはなぜセルビア嬢を交流会などのイベント事に誘わないのでしょうか?

 彼らがセルビア嬢をお誘いしていれば、セルビア嬢が男子生徒に受けが悪いと思うようなこともなかったのかもしれないのに・・・

 謎ですねぇ?

__________


 ケイトさんは面倒見のいい男前女子なので、実はファンは結構いたりします。

 Q.『ケイト様を見守る会』の会員が、なぜケイトさんをお誘いしないのか?


 A.彼らは心情的にケイトさん下にいたい踏まれたいという感じの人達なので、ケイトさんの隣に並ぶのは畏れ多かったから。
しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?

藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」 愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう? 私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。 離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。 そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。 愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

最後に報われるのは誰でしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
散々婚約者に罵倒され侮辱されてきたリリアは、いい加減我慢の限界を迎える。 「もう限界だ、きみとは婚約破棄をさせてもらう!」と婚約者に突きつけられたリリアはそれを聞いてラッキーだと思った。 限界なのはリリアの方だったからだ。 なので彼女は、ある提案をする。 「婚約者を取り替えっこしませんか?」と。 リリアの婚約者、ホシュアは婚約者のいる令嬢に手を出していたのだ。その令嬢とリリア、ホシュアと令嬢の婚約者を取り替えようとリリアは提案する。 「別にどちらでも私は構わないのです。どちらにせよ、私は痛くも痒くもないですから」 リリアには考えがある。どっちに転ぼうが、リリアにはどうだっていいのだ。 だけど、提案したリリアにこれからどう物事が進むか理解していないホシュアは一も二もなく頷く。 そうして婚約者を取り替えてからしばらくして、辺境の街で聖女が現れたと報告が入った。

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

これは一周目です。二周目はありません。

基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。 もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。 そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

処理中です...