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しおりを挟む「説得は、大変ではありませんでしたか? 怪我などはされていませんか?」
「いいえ、そんなことは全くありません! 全然大丈夫です!」
少し声を潜めた心配そうな質問に、胸を張って応えるテッド。心なしか、いつもよりキリっとした表情に見えないこともない。若干デレデレもしているけど。
「うむ。昨日は純然たる話し合いで済んだので、相手の方も怪我一つありません。ご安心ください」
同意して頷いたレザンを見上げ、
「そうですか。それはよかったです」
安心したような表情のセルビア嬢。
そりゃあ、テッドとレザンなら、荒事にはレザンの方が安心感はあるよね。あくまでも昨日は、話し合いしかしてないけど。
「では、わたし達はこれで失礼しますね。セルビア嬢も、昨日のような輩にはお気を付けください。セルビア嬢の鞭の腕は拝見しましたが、万が一があっては危険ですからね」
と、言葉を切ってレザンへ目配せすると、確りと頷かれた。
「もしセルビア嬢がお嫌でなければ、わたしかレザンに声を掛けてください。番犬代わりに使って頂いても構いませんので」
「うむ。遠慮無く使ってください」
そう言って行こうとしたら、
「あのっ、ハウウェル様!」
「はい、なんでしょうか?」
呼び止められました。
「その、このようなことは、あまり言いたくないのですが・・・」
少し顔を曇らせ、セルビア嬢が口を開いた。
「侯爵様の覚えのめでたいハウウェル様は、狙い目だと話している令嬢達がいますので。ハウウェル様も、お気を付けください」
ここ最近の、交流会のお誘いはそれが原因かっ!? ぁ~、アレだ! きっと、この前のどこぞの馬鹿が絡んで来て、セディーの身体が弱かったことを蒸し返したことも一因となっていそうだっ!?
チッ……目の前にいなくても迷惑な野郎共だな。今度絡んで来たら、どうしてくれようか……
親と不仲な次男だけど侯爵の祖父に可愛がられていて、長男の身体が弱いなら侯爵位を継ぐ可能性がある……と思われたのかもしれない。身体が弱かったのは子供の頃のことだって、あの場でちゃんと否定はした。
けど、話を聞かない人はどこにでもいるということだろう。または、わたしに取り入ってお祖父様に口利きを狙う輩か。
「ご忠告、感謝します」
まぁ、令嬢達にギラ付いた眼差しで狙われようとも、脳筋共から逃げ続けるよりはハードルが高くない筈だ。あと数日間、逃げ切ってみせようじゃないか!
うん。あと数日がんばろう、わたし・・・
「いえ、それで……ハウウェル様、セディック様の方も交流会の前には苦心されていましたから」
「そうなんですか?」
「ええ。まあ、あの方は交流会のパートナーをさっさと決めてしまわれて、当日にドタキャンなどを平気な顔でされていましたけど」
「ええっ!! セディーがそんな酷いことをっ!?」
「ああ、いえ。違うのですよ? 事前に交流会に出ないという予定の方と示し合わせてパートナーを組んで、他の令嬢を躱したり、会場入りするときにだけパートナーを伴って、途中で別の男子生徒へエスコートを代わってもらって、ご自分はしれっとした顔で退場など、なかなか強かに過ごしていらっしゃいましたよ」
あー、もうホントびっくりしたぁ・・・
「おー、さっすがハウウェルのおにーさんだわ。腹黒い感じ出てるなー」
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