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「ぁ~、弟さんラブなんですね。副部長

 そこでなぜ、ニヤニヤとわたしを見るのか・・・まぁ、ブラコンなのは否定しないけどね。

「ええ、ええ! そうなんです! わたしのリヒャルトはとても可愛くて賢くて優しくて天使のように尊くて可愛くて可愛いんですよっ!? あのほっぺのぷにぷに感なんか、余所の子供なんか目じゃありません! けーとねえさま、って舌っ足らずに呼ぶ声なんか最高に可愛らしいのです!!!!」

 どうやら、セルビア嬢の弟さんはその口振りだと、まだ小さなお子さんみたいだ。

 小さい子、か・・・脳裏に浮かぶのは、ふわふわとした亜麻色の髪と、目の覚めるようなコバルトブルーの瞳。

「・・・ええ。わかります。小さい子のほっぺたって、ぷにぷにもちもちしてて本当に触り心地がよくて、ずっと触っていたくなりますよねぇ。ねえさまって、可愛い声で呼ばれたらもう、どこにいてたって駆け付けて、柔らかくて小さな身体を抱き締めたくなりますよねっ! 大好きですなんて言われたらもう、すっごくすっごく幸せな気持ちになりますよね!」

 しっかりと頷いて同意すると、感極まったようにガシっと両手を握られ、うんうんと熱く頷くセルビア嬢。
 あ、手が普通の女性よりもちょっと硬い。さすが、鞭捌ムチさばきに定評のあるセルビア嬢ですね。

「そうです! そうなんですよハウウェル様っ!! ああ、もう、どうしてわたしのこの身は一つしかないのでしょうか? もし、もう一つ自由になる身体があったなら、リヒャルトの側を片時も離れないでずっと見ていられるのに・・・できることなら、寝ないでずっとリヒャルトを見詰めていたいというのにっ!?」

 いつもの凛とした表情ではなく、くるくるとよく変わる表情。弟さんへの熱い想いがほとばしっていますねぇ。

 ・・・うらやましいなぁ。と思った瞬間、なんだか急に・・・ちょっとだけ、寂しい気分になったかも。

「ゎー、なんかすっげーブラコン……それになに? まさかハウウェル、もしかして……子供がいたりしちゃったり?」

 ぼそりとした呟きの後、いやに真剣な顔でおそるおそるという風に聞いたテッドに眉をしかめる。アホな質問のお陰で、出そうになった涙が引っ込んだ。

「誰が子持ちか。わたしを幾つだと思っている」
「だよなー、幾つンときの子よ? ってめっちゃビビったし。じゃあ、弟妹でもいるん? あー、それとも親戚の子か? それにしても、ねーさま呼びってどうよ? ハウウェル、姉ちゃんだと思われてんの? 美人過ぎて? ちっさい子なら勘違いしそうだけどさ」

 ほっとしたような顔で、なにやらアホなことをのたまわれた。

 なにを言ってるんだか? スピカが、わたしを婚約者にと選んだというのに、全く・・・

「そんなことあるワケないでしょ。舌っ足らずでネイサン・・・・って言えなくての、ネイさま・・・・呼びだよ」
「あー、そっちな? 確かに、ネインのthの発音はちっさい子にはちっとむずいかもなー」
「ふむ……なにやら話が脱線し捲りだぞ? いいのか? ハウウェル」


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