197 / 673
179
しおりを挟む―-✃―――-✃―――-✃―-―
「放せっ!? 」
わーわー喚く先輩に、
「ねー、センパイ。………………」
テッドがぼそぼそなにかを囁くと、みるみるうちに青い顔になり、大人しく付いて来るようになった。
そして、連行した勘違い先輩に話を聞いて――――
最初は勢い良く話していた彼だけど、その合間にテッドの、「無いわー」「やだっ、マジで言ってンのっ!?」「マジキモい」「うわ、恥ずっ!」「ヤッベー勘違いだわ」「ありえねー」「男として最低ー」なんて合の手が入る度、先輩の元気が段々なくなって行き……
「マジ無いわー。多少強引な態度でも許されるのは、こういう見るからに優男な美形か、いいガタイしたコイツみたいな男前か、命を助けたレベルの恩人くらいなもんなんだって。並みや普通以下の顔した野郎が、勘違いして俺様気取っても、痛々しくてキモいだけって、姉ちゃんが言ってたぜ」
と言われて、涙目になっていた。
次いで、権力を笠に着て女性へ迫るという行為が如何に最低で、先輩の勘違いが如何に気色悪く、女性にとってどれ程迷惑を被り、気持ち悪くて怖い思いをさせたのかということを、わたしが想像混じりに滔々と話して聞かせ、レザンが犯罪者の末路を重々しく語ったら・・・
「ごめんなさい、本当にごめんなさい、俺如きが思い上がって本当にごめんなさい。貧乏伯爵三男で金も地位も無くて大した顔でもないし貧弱な身体なのに、身の程知らずにも逆玉の入り婿を狙って成金のロビーナ」
「は?」
「……じゃなくて、なりあがりのロビーナさんへむりやり言い寄ってごうまんなたいどをとってきもちわるいおもいをさせてごめいわくをかけましたこわいおもいをさせてごめんなさいおとこまさりのあのおんな」
「は?」
「……じゃなくて、ケイトさんにもわるぐちいってごめんなさい……もう、しません」
と、なぜか泣きながら反省して謝って、これからは女性を強引に誘うようなことは二度としないと誓ってくれました。
「いやー、いいことしたわ♪飯食いに行こうぜ」
いい笑顔を浮かべるテッド。
話し合いには思ったよりも時間を食ってしまい、夕方になってしまった。
「その前に、セルビア嬢に話をしておいた方がいいと思うんだけど……」
時間が微妙だ。
「なら、行ってみりゃいいじゃん」
「お腹空いてるなら先戻っててもいいよ?」
「いや、俺も行く。そして・・・」
テッドは、キリッとした顔で言った。
「副部長にお礼を言われたいっ!」
「・・・え? なにそれ?」
「は? 副部長美人じゃん。俺はな、ちゃんと女の子の美人さんにお礼を言われたいっ!」
「うわ、不純な動機」
「うるせー、男がかっこ付ける動機の大概はな、不純なんだよっ!?」
「ふぅん・・・」
「ったく、これだから美形はよぉ……で、お前は?」
「うん? 勿論、俺も行くぞ。関わった者として責任があるからな」
と、結局三人で馬場を見に行くことになった。
「ところで、テッド。あの先輩になに言ったの? 君がなにか言った後で、やたら素直に付いて来たよね? あの勘違い先輩」
「んあ? あー、あれな? 同じクラスにいるんだわ。あの先輩の妹さんが」
「え?」
「で、妹さんが先輩のしたこと知ったらどう思うのかなー? ってのと、もし先輩がこんなことで退学ンなったら、妹さんはどうなると思います? ってさ」
「君もなかなかだね」
「いやん、誉められちゃった♡」
20
お気に入りに追加
745
あなたにおすすめの小説


【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜
真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。
しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。
これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。
数年後に彼女が語る真実とは……?
前中後編の三部構成です。
❇︎ざまぁはありません。
❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します
シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。
両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。
その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる