虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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―-✃―――-✃―――-✃―-―

「放せっ!? 」

 わーわー喚く先輩に、

「ねー、センパイ。………………」

 テッドがぼそぼそなにかを囁くと、みるみるうちに青い顔になり、大人しく付いて来るようになった。

 そして、連行した勘違い先輩に話を聞いて――――

 最初は勢い良く話していた彼だけど、その合間にテッドの、「無いわー」「やだっ、マジで言ってンのっ!?」「マジキモい」「うわ、ずっ!」「ヤッベー勘違いだわ」「ありえねー」「男として最低ー」なんて合の手が入る度、先輩の元気が段々なくなって行き……

「マジ無いわー。多少強引な態度でも許されるのは、こういう見るからに優男な美形か、いいガタイしたコイツみたいな男前か、命を助けたレベルの恩人くらいなもんなんだって。並みや普通以下の顔した野郎が、勘違いして俺様気取っても、痛々しくてキモいだけって、姉ちゃんが言ってたぜ」

 と言われて、涙目になっていた。

 次いで、権力を笠に着て女性へ迫るという行為が如何いかに最低で、先輩の勘違いが如何に気色悪く、女性にとってどれ程迷惑を被り、気持ち悪くて怖い思いをさせたのかということを、わたしが想像混じりに滔々とうとうと話して聞かせ、レザンが犯罪者の末路を重々しく語ったら・・・

「ごめんなさい、本当にごめんなさい、俺ごときが思い上がって本当にごめんなさい。貧乏伯爵三男で金も地位も無くて大した顔でもないし貧弱な身体なのに、身の程知らずにも逆玉の入り婿を狙って成金のロビーナ」
「は?」
「……じゃなくて、なりあがりのロビーナさんへむりやり言い寄ってごうまんなたいどをとってきもちわるいおもいをさせてごめいわくをかけましたこわいおもいをさせてごめんなさいおとこまさりのあのおんな」
「は?」
「……じゃなくて、ケイトさんにもわるぐちいってごめんなさい……もう、しません」

 と、なぜか泣きながら反省して謝って、これからは女性を強引に誘うようなことは二度としないと誓ってくれました。

「いやー、いいことしたわ♪飯食いに行こうぜ」

 いい笑顔を浮かべるテッド。

 話し合い・・・・には思ったよりも時間を食ってしまい、夕方になってしまった。

「その前に、セルビア嬢に話をしておいた方がいいと思うんだけど……」

 時間が微妙だ。

「なら、行ってみりゃいいじゃん」
「お腹空いてるなら先戻っててもいいよ?」
「いや、俺も行く。そして・・・」

 テッドは、キリッとした顔で言った。

「副部長にお礼を言われたいっ!」
「・・・え? なにそれ?」
「は? 副部長美人じゃん。俺はな、ちゃんと女の子の美人さんにお礼を言われたいっ!」
「うわ、不純な動機」
「うるせー、男がかっこ付ける動機の大概はな、不純なんだよっ!?」
「ふぅん・・・」
「ったく、これだから美形はよぉ……で、お前は?」
「うん? 勿論、俺も行くぞ。関わった者として責任があるからな」

 と、結局三人で馬場を見に行くことになった。

「ところで、テッド。あの先輩になに言ったの? 君がなにか言った後で、やたら素直に付いて来たよね? あの勘違い先輩」
「んあ? あー、あれな? 同じクラスにいるんだわ。あの先輩の妹さんが」
「え?」
「で、妹さんが先輩のしたこと知ったらどう思うのかなー? ってのと、もし先輩がこんなことで退学ンなったら、妹さんはどうなると思います? ってさ」
「君もなかなかだね」
「いやん、誉められちゃった♡」

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