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 学園に入学して、早数ヶ月が経とうとしている。

 そろそろ、長期休暇をどう過ごすか? という話題が生徒の口に上がるようになって来た。

 しかし、長期休暇の前にはどうしても避けては通れないモノがあり――――

「俺、休暇には旅行に行くんだ。遠くに・・・」
「なんか、夢見てっとこ悪いけど、お前あんまり成績良くなかったんじゃね?」
「そーそー、追試や補講回避してから言えよ」
「現実を見せるな~っ!?」

 なんて会話が聞こえて来た。

 まぁ、あれだ。

 長期休暇の前に立ち塞がる大いなる試練――――

 期末テストが、迫って来ている!!

「で、ぶっちゃけどうよ?」

 深刻な顔で、テッドがなにかを訊いて来た。

「どう、とはなにがだ?」
「成績だよ! テストだよ! どんな感じなんだよ!」
「テスト、か・・・俺は、留年さえしなければ追試も補講も構わんっ!」

 ふっ、と遠くを見詰めてやたら男らしく言い切ったレザンに、

「……いや、それは構うだろ」

 ぼそりとつっこむリール。

「兄貴達のノートが使えない時点で俺は諦めている」
「無駄に潔いなっ!? つか、兄貴達のノートって? レザンのにーちゃん達、ここの卒業生? 授業内容が変わったりしてんの?」
「いや、兄貴達は以前通っていた騎士学校の卒業生だ。あちらの高等部に持ち上がっていれば、そのまま兄貴達のノートが使えたのだがな・・・」
「……レザンは、あまり成績が良くないのか?」
「うむ。俺はあまり頭が良くないからな」

 レザンが頷くと、

「・・・にーちゃんのノートと言えば、ハウウェルのおにーさんのノートなんてどうだっ!?」

 バッ! と縋るような必死な顔のテッドが、わたしに振り向いた。

「あ、それ無理」
「なぜだっ!? ハウウェルのおにーさんは上位クラス卒業生だろっ!! しかも去年のっ!? 授業内容やテスト範囲の大幅な変更でもあったというのかっ!? それとも貴様、自分一人でおにーさんのノートを独り占めする気かこの裏切者~!」

 無理という言葉に、わたし掴にみかからんばかりのテッド。

「落ち着け、テッド。ハウウェルにはそんなつもりはないんだ」

 それを重々しく窘めるレザン。

「じゃあどういうつもりなんだっ!?」

 う~ん、取り乱してるなぁ。テッドって、そんなに成績ギリギリなのかな?

「いや、中間テストのときもレザンに言ったんだけどさ? セディーはわたしとは頭のできが違うんだよね」
「だったら尚更、その頭のできの良いおにーさんのノートをっ!?」
「うん。頭のできが違うから、そもそもノートを取る必要が無かったみたいなんだよね。一度授業を聞けば十分なんだって。セディーは」
「へ?」
「だから、セディーのノートはほとんど無い。無いものは使えない。よって、テストは自力で頑張るしかないワケ。OK? テッド」

 まぁ、わたしは一応、帰省したときにセディーに直に勉強を教わってるけど。

「マジでっ!?!?」
「そ。マジで」
「なんてこったっ!!」
「……いや、どれだけ他力本願なんだ?」

 ぼそりとしたツッコミに、ギギギと音がしそうな動作でリールの方へと顔を向けるテッド。

「! な、なんだ……」


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