虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
184 / 673

166

しおりを挟む


✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐


 学園に入学して、早数ヶ月が経とうとしている。

 そろそろ、長期休暇をどう過ごすか? という話題が生徒の口に上がるようになって来た。

 しかし、長期休暇の前にはどうしても避けては通れないモノがあり――――

「俺、休暇には旅行に行くんだ。遠くに・・・」
「なんか、夢見てっとこ悪いけど、お前あんまり成績良くなかったんじゃね?」
「そーそー、追試や補講回避してから言えよ」
「現実を見せるな~っ!?」

 なんて会話が聞こえて来た。

 まぁ、あれだ。

 長期休暇の前に立ち塞がる大いなる試練――――

 期末テストが、迫って来ている!!

「で、ぶっちゃけどうよ?」

 深刻な顔で、テッドがなにかを訊いて来た。

「どう、とはなにがだ?」
「成績だよ! テストだよ! どんな感じなんだよ!」
「テスト、か・・・俺は、留年さえしなければ追試も補講も構わんっ!」

 ふっ、と遠くを見詰めてやたら男らしく言い切ったレザンに、

「……いや、それは構うだろ」

 ぼそりとつっこむリール。

「兄貴達のノートが使えない時点で俺は諦めている」
「無駄に潔いなっ!? つか、兄貴達のノートって? レザンのにーちゃん達、ここの卒業生? 授業内容が変わったりしてんの?」
「いや、兄貴達は以前通っていた騎士学校の卒業生だ。あちらの高等部に持ち上がっていれば、そのまま兄貴達のノートが使えたのだがな・・・」
「……レザンは、あまり成績が良くないのか?」
「うむ。俺はあまり頭が良くないからな」

 レザンが頷くと、

「・・・にーちゃんのノートと言えば、ハウウェルのおにーさんのノートなんてどうだっ!?」

 バッ! と縋るような必死な顔のテッドが、わたしに振り向いた。

「あ、それ無理」
「なぜだっ!? ハウウェルのおにーさんは上位クラス卒業生だろっ!! しかも去年のっ!? 授業内容やテスト範囲の大幅な変更でもあったというのかっ!? それとも貴様、自分一人でおにーさんのノートを独り占めする気かこの裏切者~!」

 無理という言葉に、わたし掴にみかからんばかりのテッド。

「落ち着け、テッド。ハウウェルにはそんなつもりはないんだ」

 それを重々しく窘めるレザン。

「じゃあどういうつもりなんだっ!?」

 う~ん、取り乱してるなぁ。テッドって、そんなに成績ギリギリなのかな?

「いや、中間テストのときもレザンに言ったんだけどさ? セディーはわたしとは頭のできが違うんだよね」
「だったら尚更、その頭のできの良いおにーさんのノートをっ!?」
「うん。頭のできが違うから、そもそもノートを取る必要が無かったみたいなんだよね。一度授業を聞けば十分なんだって。セディーは」
「へ?」
「だから、セディーのノートはほとんど無い。無いものは使えない。よって、テストは自力で頑張るしかないワケ。OK? テッド」

 まぁ、わたしは一応、帰省したときにセディーに直に勉強を教わってるけど。

「マジでっ!?!?」
「そ。マジで」
「なんてこったっ!!」
「……いや、どれだけ他力本願なんだ?」

 ぼそりとしたツッコミに、ギギギと音がしそうな動作でリールの方へと顔を向けるテッド。

「! な、なんだ……」


しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

眠りから目覚めた王太子は

基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」 ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。 「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」 王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。 しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。 「…?揃いも揃ってどうしたのですか」 王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。 永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

もう、あなたを愛することはないでしょう

春野オカリナ
恋愛
 第一章 完結番外編更新中  異母妹に嫉妬して修道院で孤独な死を迎えたベアトリーチェは、目覚めたら10才に戻っていた。過去の婚約者だったレイノルドに別れを告げ、新しい人生を歩もうとした矢先、レイノルドとフェリシア王女の身代わりに呪いを受けてしまう。呪い封じの魔術の所為で、ベアトリーチェは銀色翠眼の容姿が黒髪灰眼に変化した。しかも、回帰前の記憶も全て失くしてしまい。記憶に残っているのは数日間の出来事だけだった。  実の両親に愛されている記憶しか持たないベアトリーチェは、これから新しい思い出を作ればいいと両親に言われ、生まれ育ったアルカイドを後にする。  第二章   ベアトリーチェは15才になった。本来なら13才から通える魔法魔術学園の入学を数年遅らせる事になったのは、フロンティアの事を学ぶ必要があるからだった。  フロンティアはアルカイドとは比べ物にならないぐらい、高度な技術が発達していた。街には路面電車が走り、空にはエイが飛んでいる。そして、自動階段やエレベーター、冷蔵庫にエアコンというものまであるのだ。全て魔道具で魔石によって動いている先進技術帝国フロンティア。  護衛騎士デミオン・クレージュと共に新しい学園生活を始めるベアトリーチェ。学園で出会った新しい学友、変わった教授の授業。様々な出来事がベアトリーチェを大きく変えていく。  一方、国王の命でフロンティアの技術を学ぶためにレイノルドやジュリア、ルシーラ達も留学してきて楽しい学園生活は不穏な空気を孕みつつ進んでいく。  第二章は青春恋愛モード全開のシリアス&ラブコメディ風になる予定です。  ベアトリーチェを巡る新しい恋の予感もお楽しみに!  ※印は回帰前の物語です。

処理中です...