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「あ、そうそう。それそれ。なーんか、変な噂が立ってんぞ? ハウウェル」

 噂、か・・・

 変な、そして悪意のある噂というなら、あんまりよくない噂なんだろうな。

「うむ。まぁ、あれだ。ハウウェルの家族仲が悪いだとか、疎まれているなどという、そんな噂が出ていたぞ」
「レザン君っ!?」

 レザンの言葉に、なぜか慌てるライアンさん。

「ふぅん……まぁ、その程度ならどうってことないかな」
「え?」
「いや、どうってことあるだろ!」
「……そこは、もう少し気にするべきだ」

 三者三様の応え。

「そう、かな? だって、セディーは兎も角、両親と不仲……というか、わたしがあの人達に疎まれているのは事実だからね」
「ぅえ? ちょっ、ハウウェル? それ、こんなとこでしていい話じゃなくねっ? 人目あるし、俺ら部外者よ? そんな軽々しく……」
「軽々しいもなにも、我が家の不仲は今に始まったことじゃないからね。ある程度うちとお付き合いのある人達の間じゃ、結構有名だし。むしろ、噂が回るのが遅いと思っていたくらいだよ」
「マジかよ……?」
「マジな話だねぇ。だって、わたしが最初にあの人達に家を追い出されたのって、乳児の頃だよ?」

 十五年程前からの出来事だから、知っている人は知っている話だ。今更過ぎる。

「やだっ、なんか想像以上にハードな話だったっ!?」
「……普通、乳児の頃に家を追い出されたら生きてないんじゃないか?」

 頭を抱えるテッドに、冷静なツッコミを入れるリール。

「ああ、その辺りは詳しく言うと、生まれて二、三ヶ月で育児放棄されたわたしが可哀想だからって、お祖父様の家で大事に育てられたから大丈夫」

 当時は、お祖父様とおばあ様に次男を取り上げられたって、余所に話していたみたいだけど。

「それ全然大丈夫じゃないやつ! どうしようっ、ダチになった奴の人生がハードモードだっ!?」
「あはは、そんなハードじゃないって。生まれてすぐに暗殺され掛かって、それを守る為に従者が何名も命を落としたとか、そんなレベルの話じゃないから」
「……それは、どこの物語の主人公だ?」

 リールが訝しげに眉を寄せる。

「物語じゃなくて、実話だね。わたしとレザンの同級生の、辛うじて王位継承を持ってる性格の悪い王族の話。ちなみに、この国の王族じゃなくて他国の王族ね。元気にやってるといいよね」

 俺が死んでも誰も悲しまない、と笑っていた人騒がせな彼は――――

 是非とも、わたし達に関わらない遠いところで元気にしていてほしい。彼の近くにいると、色々と厄介な目に遭うし。知人が殺されたなんて、寝覚めが悪いからね。

「うむ。今は、自国に戻らず世界一周をするのだと、あちこちに足を伸ばしているらしいぞ」

 この国には、暫く来ないでほしいものだ。

「なんというか、顔が広いのですね……ネイサン様とレザン君は」
「まぁ、そういう知り合いがいるから。わたしが特段不幸なワケじゃないよ」

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