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しおりを挟む「ね、ネイサン様は侯爵様のお孫さんで、この前は侯爵家の馬車がネイサン様をお迎えに来ていましたよねっ? すごいですよね~」
慌てたような声が紡いだ。
すると、カフェ内の空気が若干変わる。
おそらくは、彼女の言葉が届いた範囲の貴族子女達の関心を引いたようで、ひっそりと注目……というよりは、聞き耳を立てられているような気配がする。
「お兄様とも仲良しそうで、うらやましいですね!」
「・・・ええ。ありがとうございます」
思わず微笑んでしまった。
うん。わたしとセディーは仲が良い。
セディーは昔からわたしを可愛がってくれるし、わたしもそんなセディーが大好きだ。
でも、世の兄弟には、骨肉の争いをしたり憎み合うということもあるようで・・・
セディーとわたし。両親のあれこれなど、ハウウェル子爵家の内情を知っている人達には、わたしがセディーを嫌っているんじゃないか? とか、セディーに嫌われているんじゃないか? などと言って心配して来る人達がいる。
両親がアレなのは、セディーのせいじゃない。
だからわたしは、セディーを嫌ってなんかいない。むしろ、セディーがいなかったら、どうなっていたかもわからない。
そしてセディーだって、わたしをとても可愛がってくれている。
だというのに、幾ら違うと言っても、わたし達兄弟が仲が良いのは嘘だと決め付け、わたし達が対立しているというように、嫌い合っている前提の人達がそこそこいるんだよねぇ。
兄弟仲が不仲と言われるのを否定しても、「無理しなくていいんだよ?」だとか……なんていうかこう、「わかっているから大丈夫だよ?」的な感じで向けられる眼差しが微妙に苛立つというか。
むしろ、そういう連中程、絶対ぇわかってねぇんだよな。
・・・なんというか、あれだ。今まで話が通じないと思っていた人と、思わぬことで意思疎通ができてしまったようで、びっくりしたのは勿論。若干の戸惑いも感じる。
セディーとわたしが仲良しだと言ってくれたのが、あんまりお近付きになりたいと思うような相手じゃないというのが複雑というか・・・
でもまあ、それとこれとは別だ。
「では、失礼します」
と、わたしはカフェを出ることにした。
「あ、ネイサン様!」
なんか、また馴れ馴れしく呼ばれているような気がするけど、きっと気のせいに違いない。
わたしはなにも聞こえていない。カフェを出るとダッシュで即行男子寮に戻った。
さすがに、彼女も男子寮までは追って来ないだろう。というか、女子生徒は立ち入り禁止だし。ちなみに、女子寮は男子の立ち入りが禁止されている。
そんなことは兎も角・・・今度はおやつを食いっぱぐれたっ!?
仕方ないので、夕食までは部屋で大人しく、常備しているビスケットを齧ることにした。
あ~あ、パフェ食べたかったなぁ・・・
残念だ。
ホントもう、今日はなんなんだろう・・・
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