虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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「誰が、そのようなことを……」

 さっきよりも血の気の引いた蒼白な顔で二人を見やるライアンさん。なんだか、今にも倒れそうな風情なんだけど……大丈夫でしょうか?

「ハウウェル夫人が言っていたそうだ」
「兄の健康を奪って生まれたクセに、成績の良くない、女みたいな顔の出来損ない。だから、祖父母にも疎まれて、目障りだと隣国に追いやられた弟なんだと」
「へぇ……」

 ハウウェル夫人、か……成る程。

 わたしが家族に疎まれているという情報を流したのは、あの人でしたか。ということは、この人達はあの人と付き合いのある家の子弟、または縁者と見て間違いないでしょうねぇ。

 まぁ、確かにわたしは両親あの人達には疎まれていますね。セディーや祖父母にまで疎まれていたとは、初耳な話ですが……
 所詮はあの人経由の情報ですし。存分に妄想込みの話と言ったところでしょうか。

 あれだけわたしを心配してくれるお祖父様とおばあ様、セディーがわたしを嫌っていたとしたら、舞台俳優顔負けの物凄い演技力だと思いますね。

 それに、おばあ様が見切りを付けたあの人と未だに……かはわかりませんが、かく、お付き合いをしているような性質たちのよくない人達の縁者ですし。その品性は推して知るべし、ですか。

 仕方ありませんねぇ。相手をするつもりは無かったんですけどね。全く・・・

「……先輩方はご存知ないかもしませんが……実はわたし、ハウウェル侯爵の孫なんですよ?」

 にっこりと、口元だけで薄い笑みを作る。使用させて頂きましょう。ハウウェル侯爵お祖父様の七光りを。

「は?」
「っ……」

 なに言ってんだコイツ? 的な視線がわたしへ向けられ、次いで先輩達の頬が赤く染まる。

「まぁ、確かに。わたしは両親に疎まれているでしょうね。ですが、それがなにか? 貴族間では家族の不和、不仲だなんて、よくある話でしょう? 大して特筆すべき話題でもないのに。そんなに大声ではしゃいで、得意げに触れ回らなくてもいいじゃないですか。ああ、それとも、先輩方のご家族は他人様ひとさまに自慢できるくらいに、とても仲が宜しいのですか? それは結構なことですね」
「……ネイサン様……」

 わたしの言葉に、なんともいえない悲しそうな顔をするライアンさん。いや、ある程度は当て擦りやイヤミ混じりなので、そんな顔はしなくてもいいんですけどね。

「それに、二つ程訂正をさせて頂きます。わたし、家族・・でいうと祖母似なんですよ」
「はあ?」
「それがなんの関係がある!」


__________



 ネイサンのおかんの、性質悪い茶飲み友達?の、息子的な先輩達ですね。

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