172 / 673
154
しおりを挟むなんで弱いわたしに、コイツが執着するのかマジでワケわからん。
鍔迫り合いにならないよう、上から押さえ込まれないよう、引き腰気味にレザンの打ち込みを躱したり、往なしたり、肘や蹴り、拳を入れて離れたりと、どうにか微々たる反撃をする。
ちなみにレザンは、剣以外は使わない。相変わらず、正々堂々とした剣で・・・
わたしの足蹴りや素手での攻撃が汚いだとか、そんなことはどうでもいい!!
こちとら、奴の攻撃を凌ぐのに必死だ。若干命の危機を感じるような気もするし、怪我とかも怖いというのに、正々堂々だなんてそんな綺麗事言ってられるかっ!?
「フハハハハハっ!? 楽しいな、ハウウェルっ!!」
「はあっ!? 全っ然楽しくねぇんだよっ!?」
何度も言うようだが、わたしは必死だ。
こんな、弱い奴を相手に楽しいと言って笑う奴の神経がわからない。
「フッ、そろそろだな。行くぞっ!!」
ニヤリと、獰猛に笑うレザン。瞬間――――
「っ!?」
背筋がぞわりと粟立つと同時に、
「破ぁっ!」
裂帛の気合と強烈な打ち込み。
「ぅ、ぐっ!?」
その直撃を食らう前に、反射的に木剣の腹に木剣の刃を当て、辛うじて衝撃を往なした。木剣は飛ばされずに済んだが、手に、腕に、肩に、骨にまで響く重たい一撃だった。
「やはりなっ!? こうでなくては面白くないっ!!」
爛々と輝く瞳。楽しげな声。
「はあっ!? なにが面白いだよこの脳筋野郎がっ!? 手加減しろっつってンだろっ!! 今の手ぇとか肩までめっちゃ痛かったじゃねぇかよっ!?」
人が、痛い思いをしているというのにっ・・・
「俺の本気を止めるとはやるじゃないかハウウェル!」
「手前ぇ、殺気飛ばすなっ!?!? 本気出すとかマジやめろって言ってんだろっ!? 手加減を要求するっつってンだろうがっ!!」
「手加減など要らんだろうっ、さあもっと楽しもうではないかっ!!」
そんなやり取りをした後からの記憶が曖昧で――――
――――気が付けばわたしは、地面にぶっ倒れていた。ドクドクと煩い鼓動。全身が熱くて怠い。息が切れている。
「大丈夫か? 水飲めるか? ハウウェル」
心配そうに上から覗き込むテッド。
「み、ず……」
怠い身体を起こし、差し出された水を飲む。
「……はぁ、はぁっ……ありが、とう……」
水を飲んで礼を言い、
「で、どうだった? わたしがボッコボコにされてるところを見学しているのは?」
これまでを見学していたテッドに尋ねる。
「いや、なんつーかその・・・えっぐいわ! ハウウェル十分強いとか思ってたけど、レザンがなんか動きえげつない。あそこまでハウウェルボコる必要あんの?」
15
お気に入りに追加
727
あなたにおすすめの小説
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
【完結】本当の悪役令嬢とは
仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。
甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。
『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も
公爵家の本気というものを。
※HOT最高1位!ありがとうございます!
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる