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しおりを挟む「いやいや。偉いのは父なんかじゃなくて、あくまでも、お祖父様の方だからね。父は偉くないよ?」
うん。そこを間違っちゃいけないよねぇ?
なにせお祖父様は、父に侯爵位を継がせるつもりは微塵も無いからなぁ。
「一応言っとくけど、実は王族や公爵、侯爵の孫やひ孫、親類縁者って下位貴族は、それなりにいるんだよ? 自分でそうは名乗らないだけ……っていうか、家同士の確執や事情で名乗れなかったりする人も割と多いしさ。だから、そんな驚いた顔しないでよ」
「マジでっ!?」
「ホントホント」
「肯定、軽っ」
「うむ。とっくに没落しているのに、何代も前に王族が降嫁したと、未だに誇る家もあるくらいだ」
「何代も前って……一体何年前のことだよ?」
「多分、百年以上は経っているのではないか?」
「百年以上前のことを未だに自慢・・・」
✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐
午後の授業が終わって放課後。
「なー、なー、この話知ってっか? こないだのことらしいんだけどさ。貴族の男子生徒が、馬車が来なくて困ってる平民のおじょーさんを校門前に置いてけぼりにして一人で馬車に乗ってさっさと帰っちまったって話。あれって、貴族的にどう思うよ?」
かっぽかっぽと馬に揺られながら、テッドが聞いて来た。
なにやら、どこぞで似た話を聞いたような気がするけど・・・なんだっけ?
「ふむ。余程切羽詰まっている状況下や身内の訃報でもない限りは、その女子生徒の為にも、置いて行くのが妥当な対応ではないか? なあ、ハウウェル」
「え? マジで? その男子酷ぇって怒ってる平民連中結構いるみたいだぞ? ちなみ、冷静な奴らは、その女子、寮に帰ればいいんじゃね? 派らしいけど」
「ふぅん・・・」
「それで、なんで困ってンの放置して置いてきぼりにすんのが、その女子の為になんの?」
「うん? それはあれだな。要らぬ不貞疑惑を避ける為だろう」
「ふてー疑惑?」
きょとんと首を傾げるテッド。
「ま、簡単に言うと、例えば……どこぞのジャックさんには、結婚を約束した女性がいます。OK?」
「おう。未来の奥さん持ちのジャックなー」
「で、その約束をした女性がいるのに、ジャックさんは別の女性と個室に籠って、数時間外に出て来ませんでした。さて、それを見ていた人達は、その二人のことをどういう目で見ますか?」
「いやん、ジャックさんったら不潔っ! ヒドいわっ、この浮気者っ!? 別れてやるんだからっ!!」
黄色い裏声が、架空のジャックさんを詰る。なかなかに芸が細かい。
「ま、そういうことだね。婚約者がいるのに、馬車という密室の中で男女が二人きりで数時間も一緒に過ごしていたら、世間的にどう思われるか? ってことでしょ」
「ほう、成る程」
「それに、未婚なのに男と密室で二人切りになっていた女性の評判も悪くなるし」
「あー、確かになぁ。そりゃ、男よりも女の子の方がダメージでかいわ。変な噂立ったら、お嫁行くのすっげー大変になるもんなぁ」
うんうんと納得した様子で頷くテッド。
「結論から言うと、その置いて行かれたという女子生徒は、男子生徒ではなくて女子生徒を頼るべきだった、というワケだな」
レザンも頷く。
「そうなるんじゃない?」
「結果的に、女子の為には置いてきぼりにする方がいいのかー」
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