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「お前らの顔は覚えたからな! 謝っても許さないぞ!」

 ふむ。一々絡んだ相手の顔を覚えているとは。どうやら、この二人は記憶力がいいらしい。そして、わざわざまた絡みに来るとは……暇なのだろうか?

 それに・・・権力を持ち出して脅すというのなら、こちらも権力で対抗するとしましょう。

「そうですか。ところで、わたしも週末は帰省していたのですが、兄上が先輩方の名前を知りたがっているんですよ。偶には、親交の・・・無かった・・・・後輩との旧交を温めるのもいいものだと、挨拶がしたいようなので。よろしければ、先輩方のお名前を教えて頂けると嬉しいのですが?」

 にっこりと微笑みながら言うと、先輩達の顔がみるみる青ざめる。

 要約すると、爵位を継げるのがご自慢みたいだが、侯爵予定の嫡男セディーがお前らのこと知りたがってるけど、名前名乗る勇気あるの? と言ったところだろうか。

 あとついでに、侯爵予定嫡男セディーが付き合うに値しない、と。交流を持たなかった奴らだけど、今度は逆の意味で目を付けられたと、気付く人は気付くでしょうねぇ。

 実際は、セディー本人はそんなこと言ってないけど、彼らの名前を知りたがっていたのは本当だ。ちょっと薄ら寒くなるような笑顔で、圧力を掛けなきゃ話し合いたいって言ってたし。ちょっとしたアレンジだ。

 セディーは侯爵家の馬車で学園に出入りしていたというから、それを知っているなら、早くとも十数年後にはセディーがハウウェル侯爵位を継ぐと思っている貴族子弟は、そこそこいるでしょうね。

 まぁ、セディー本人は十数年後どころか、遅くとも数年後には侯爵位を継ぐつもりなんだけど。

 これで名乗れるようなら、彼らはなかなかの家出身。または、クソ度胸の持ち主ですが。

 さて、どう出るか……

「よ、用事を思い出したので失礼するっ!?」
「あ、待てよっ!」

 と、二人して逃げ去った。

 バタバタと走り去る足音が響き、

「あ、連中食ったの片付けねぇで行きやがった!」

 という誰かの声がして、またもや生徒達の笑い声が沸いた。

 さて、さっさと食べよう。変な連中に絡まれたせいで、ゆっくりできる時間が減ってしまった。

「おー、ハウウェルこっちこっちー」

 ひらりと手を振って手招きするのはテッド。呼ばれたテーブルに着くと、

「あれは、本気なのか? ハウウェル」

 ぼそりと低い声が尋ねる。

「あれって?」
「だから、あの、どちら様ですかと言ったやつだ」

 苛立ったような顔で言い募るリール。

「? 本気というか、そもそも始めっから連中の顔なんて覚えてないし。多分、今もあと少ししたら忘れると思う」

 きっぱりと言うと、マジかコイツ! という視線を向けられた。なぜだろうか?

「? あんなの一々気にしてられないでしょ」

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