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「だから、割と印象に残ると思うんだが……違ったか?」

 テッドのその言葉を聞いて、意味がわかった。

「ぁ~・・・いや、うん。なんか、認識の違い、だったりするかもしれない」

 セディーとわたしでは、認識が違う。この学園は、わたしの認識からすると、かなり平穏だ。

「?」
「わたしとレザンがいた騎士学校ってのが、かなり殺伐としていたところでね。喧嘩、暴力沙汰は日常茶飯事。わたしはなにかと絡まれることが多くて・・・絡んで来て返り討ちにした連中を、一々覚えるなんてするだけ無駄だったから・・・」
「うお・・・なんか、ハウウェルの知られざるバイオレンスな一面が・・・いや、まぁ、やたら喧嘩慣れしてんなぁとは思ったが、予想以上だった!」
「ぁ~、うん。なんか、セディーがわたしをアホの子だと思う筈だわ」

 そりゃあ、真正面から絡まれる……というか、喧嘩を売られること自体がまれなのだとしたら、そんな稀な相手のことを覚えられないというのは、記憶力大丈夫か? と心配されても仕方ないかも。

 残念な子を見る目を向けられる筈だ。

「わたしはそんなアホの子じゃないという誤解を解けば・・・いや、でも、喧嘩売って来る相手の顔を覚えられないくらいに喧嘩を買っていたことがバレるのも、それはそれで・・・かなりまずい気がする!」

 駄目だ。その方が余計に、セディーやおばあ様達を心配させてしまうだろう。言えない・・・

「え? なにハウウェル、そんな喧嘩売られてたん? つーか、買ってた、の方?」
「・・・多いときは、一日五回とか。酷いときには、どっか移動する度に絡まれてた」

 移動教室やらなにやらのとき、一人になったときなんかを狙い打ちにされて、めっちゃ絡まれてた。

「は? 騎士学校バイオレンス過ぎねっ!?」
「わたしは弱そうに見えるらしくて、入学当初はやたら絡まれた」

 弱いもの虐めが好きというクズ共に。

「あー……なんつーか、ドンマイ」

 納得したような顔で励まされてしまった。なんだか凄く微妙な気分だ。

「で、絡まれるからって、片っ端から相手して潰してたら、今度は脳筋共に絡まれるようになった」

 段々と弱いもの虐めをするようなクズ共はあまり絡まなくなって来て、その代わりというか……レザンみたいに腕試しやら自分を鍛えるのが大好き系のバカな奴らとか、強い奴が偉いと勘違いをしているような馬鹿共に絡まれるようになって行った。

「・・・その脳筋共の中に、レザンもいたり?」

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