虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 わたしも、もう少し丸くなるべきかなぁ・・・

 なんて考えていたら、

「帰るまでは、遊ぼうか」

 とセディーがトランプを取り出して、カードを切り始めた。ちなみに、ボードゲームは駒を失くしそうだから持って来ていないという。

 渋滞でのろのろとなかなか進まない馬車の中、セディーとカードゲームをして。飽きたらお喋り。
 小腹が空いて来たと思ったら、準備よく用意されていた軽食を食べて。

 赤く染まる夕日に、暮れる空。馬車の中も暗くなって来て、段々とうとうとして・・・

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

 コンコンとノックの音と、「到着しましたよ」という声とで目を覚ます。

 揺れる感覚がない。

 どうやら家に着いたらしい。

 外はもう暗い。何時だろうか?
 
 右側に寄り掛かっている温かい重み。

「セディー、起きて。着いたんだって」

 二人して寝ていたようだ。

「ぅ……ん?」

 揺さぶると、返るのは寝惚けたような声。

「寝るなら家に入ってから寝よう」
「んー……」

 返事らしき声は出しながらも、わたしに寄り掛かったまま動く気配のないセディー。

「まぁ、わたしが言うのもなんだけど、相変わらずの寝起きだよねぇ。セディー? 起きないなら、もうこのまま運んじゃうよ?」

 多分、セディーが目を覚ますのを待つよりも、わたしがセディーを家の中に運んだ方が早い気がする。セディーのプライドとかを考慮しなければ、なんだけど。

「セディーってば、起きて」
「む~・・・」

 と、セディーを起こして家に入って、出迎えてくれたおばあ様に苦笑されたり、バタバタと帰って来たお祖父様に挨拶をして、夕食を食べて・・・思っていたよりも和やかに過ごした。

✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰
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