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「まあ、待てよハウウェル」

 ぽんと肩に置かれた手。ニヤァと、なにやら悪い顔で笑うテッド。

 うわ、嫌な予感が・・・

「なにかな?」
「え? あー、そっか。俺が呼んだのはお兄さんの方じゃなくて、弟さんの方です」

 テッドはハウウェルと呼ばれて応えたセディーにきょとんとし、セディーもわたしと同じハウウェルなのだと思い至ったようだ。

「ぅわ、聞いた? ネイト。この子、僕のこと、ネイトのお兄様だって!」
「? いや、それ当たり前なんじゃ……?」
「え~と、初めまして。僕はセディック・ハウウェル。こないだ卒業した、ネイトの兄です。君達にはOBに当たる先輩だね」

 にこにこと上機嫌に自己紹介し始めるセディー。

「ちょっ、セディー!」
「? どうしたの? ネイト」
「フッ、セディック様。ハウウェルはどうやら、友人を兄上へ紹介するのが照れくさいようですね」
「あ、成る程!」

 レザンの的外れな言葉に、なぜか嬉しそうに納得するセディー。

「もう、そんなに照れなくてもいいのに」

 いや、わたしは別に照れてるワケじゃないんだけど。というか、この野郎共がセディーになにか余計なことを言わないかと、気が気じゃないというか・・・

 ここ最近の出来事は、セディーに聞かせたくない。喧嘩したとか、暴力沙汰なんか起こしたことを知られたくない!

「俺はレザ」
「お前は黙れ?」

 セディーに続いて自己紹介しようとしたレザンを遮り、ギロリとメンチを切る。

「? ハウウェル?」
「? ネイト? ・・・そんなに、嫌だった? 友達に、僕を紹介したくない?」

 しゅんと悲しげに曇る表情に、

「そ、うじゃなくて・・・」

 思わず言葉に詰まる。

 セディーを紹介したくないんじゃなくて、セディーに紹介したくない。特にレザンの野郎を。

「あ~、ハウウェルってばもしかしてブラコン? おにーさん取られるとでも思ってんの? だから俺ら警戒してんの?」
「え? そうなの?」

 茶化すようなテッドの言葉に、しゅんとしたセディーの顔が、どことなく嬉しそうな表情に変わる。

「ぁ~もうそれでいいよ。わたしがブラコンなのは、多分間違ってないから」
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