150 / 673
132
しおりを挟む「ほら見ろ、ハウウェルはあんなことを一々気にするような器の小さい男じゃないと言っただろう?」
なぜか得意げに胸を張る無神経な生き物が現れた。しかも、勝手に席に着くし。
「いや、お前はなんかもっとこう、いろんなこと気にしろよレザンっ!」
無神経且つ残念な生き物にツッコミを入れるテッド。言うだけ無駄なのに。
「ふむ……気にすべき点が全くわからん! だが、不快にさせたのなら悪かったな。ハウウェル」
「まぁ、こういう奴だし」
やれやれ、と溜め息。
なんだかんだ、コイツとの付き合いも三年以上になるし。諦念と妥協も覚える。
「うん? なんだ、またケーキを強奪するか?」
「そうだね。なんか寄越せ? まぁ、今日もそれで手打ちにしてやる」
「だ、そうだぞ?」
と、レザンが言ったら、横合いからすっとチョコケーキの皿がわたしのトレイへと寄って来た。
「?」
「き、昨日は、そのっ……女子と勘違いして、すまなかった……」
ぼそぼそとした謝罪の声。
「詫びる……」
わたしから目を逸らしながらチョコケーキの乗った皿を差し出すのは・・・
「・・・ああ、昨日の」
わたしを女子だと勘違いしていた、なにやら女子が苦手そうな男子生徒。
「別に大して気にしてないけど、くれるって言うなら貰っとく。ありがとう」
「っ!?」
お礼を言うと、なぜか慌ててさがる彼。
「そうびくつくことはない。ハウウェルはそんなに怖い奴じゃないぞ? 偶に凶暴さが出るだけで、普段は猫を被って大人しい振りをしている奴だからな」
「いや、お前それどんな評価だよおい」
「うん? 事実だろう?」
「ふん」
おおよそ間違ってはいない。多分……わたしは、特に猫を被っているつもりはないけど、目立つのは嫌いだし。舐められない程度に、やられたらやり返すだけだ。隠しているつもりもない。
それを、他人がどう思うかは別、と言ったところ。
20
お気に入りに追加
746
あなたにおすすめの小説
【完結】結婚初夜。離縁されたらおしまいなのに、夫が来る前に寝落ちしてしまいました
Kei.S
恋愛
結婚で王宮から逃げ出すことに成功した第五王女のシーラ。もし離縁されたら腹違いのお姉様たちに虐げられる生活に逆戻り……な状況で、夫が来る前にうっかり寝落ちしてしまった結婚初夜のお話

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。
gacchi
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。


私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる