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しおりを挟む「ほら見ろ、ハウウェルはあんなことを一々気にするような器の小さい男じゃないと言っただろう?」
なぜか得意げに胸を張る無神経な生き物が現れた。しかも、勝手に席に着くし。
「いや、お前はなんかもっとこう、いろんなこと気にしろよレザンっ!」
無神経且つ残念な生き物にツッコミを入れるテッド。言うだけ無駄なのに。
「ふむ……気にすべき点が全くわからん! だが、不快にさせたのなら悪かったな。ハウウェル」
「まぁ、こういう奴だし」
やれやれ、と溜め息。
なんだかんだ、コイツとの付き合いも三年以上になるし。諦念と妥協も覚える。
「うん? なんだ、またケーキを強奪するか?」
「そうだね。なんか寄越せ? まぁ、今日もそれで手打ちにしてやる」
「だ、そうだぞ?」
と、レザンが言ったら、横合いからすっとチョコケーキの皿がわたしのトレイへと寄って来た。
「?」
「き、昨日は、そのっ……女子と勘違いして、すまなかった……」
ぼそぼそとした謝罪の声。
「詫びる……」
わたしから目を逸らしながらチョコケーキの乗った皿を差し出すのは・・・
「・・・ああ、昨日の」
わたしを女子だと勘違いしていた、なにやら女子が苦手そうな男子生徒。
「別に大して気にしてないけど、くれるって言うなら貰っとく。ありがとう」
「っ!?」
お礼を言うと、なぜか慌ててさがる彼。
「そうびくつくことはない。ハウウェルはそんなに怖い奴じゃないぞ? 偶に凶暴さが出るだけで、普段は猫を被って大人しい振りをしている奴だからな」
「いや、お前それどんな評価だよおい」
「うん? 事実だろう?」
「ふん」
おおよそ間違ってはいない。多分……わたしは、特に猫を被っているつもりはないけど、目立つのは嫌いだし。舐められない程度に、やられたらやり返すだけだ。隠しているつもりもない。
それを、他人がどう思うかは別、と言ったところ。
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