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「これ以上ケーキが入りそうじゃないのが残念だよ、全くもう……」

 コイツに対する、他のいい嫌がらせを思い付かないのが、至極残念だ。

「おー、やっぱりな。目付きの悪いデカい奴からケーキを強奪した強者がいるって聞こえたけど、思った通りハウウェルだったか」

 と、今度は面白がる響きの声がした。

「テッド」
「ふっ、確かに今、ケーキを二個も強奪されたところだな」
「おーおー、相変わらずレザンはよく食うもんだ。で、真相は?」

 ちらりとレザンの持つ大盛ばかりのトレイを見やり、わたしの斜め向かいに座るテッド。

「レザンが無神経だから、ケーキ二個で手を打ってやっているところ」
「なにを言う。俺はハウウェルに目を付けられた彼を逃がそうと思っただけだ」

 と、許可無くわたしの隣に座るレザン。

「だから、単なる勘違いには手ぇ出さねぇっつってんだろうが。聞けやこの無神経野郎が」

 低く言うと、

「ハっ、ハウウェルが汚い言葉を使ってるっ!?」

 やたら驚くテッドに、

「やるかハウウェルっ!?」

 なにかを期待するように目を輝かせるレザン。

「チッ……誰がやるかこのアホが」

 わたしだって、怒れば汚い言葉くらい使う。

 ぶすりとチーズケーキにフォークを突き刺し、口に運ぶ。どっしりしたベイクドを数回噛んで飲み込み、トレイを持って立ち上がる。

「そこの人、この無神経野郎に絡まれたくなかったらさっさと逃げた方がいいよ。それと、次から・・・は気を付けた方がいい」

 目を白黒させている彼へと忠告。

「わたしみたいに、単なる忠告だけで済ませる人ばかりとは限らない。根に持つ人は根に持つから」
「ハウウェル?」

 レザンなんか無視だ。

 そして行儀は悪いが、チョコタルトを歩きながら食べて食事終了。

 トレイを返して食堂を出る。

 部屋に戻って、明日の準備でもするか。

 明日は、お祖父様の手配で放課後には馬車が校門で待っている筈だから・・・

 寮には戻らないでそのまま馬車に乗った方がちょっとは早く帰れる、かな?

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