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「うん? 怒っていなかったのではなかったのか?」
彼には・・・怒ってなかったんだけどね。今のレザンの無神経な発言に若干気分を害したんだよ、わたしは」
「ふむ、それは悪かったな。俺から奪ったチーズケーキで手打ちとしてくれ」
「奪ったとはまた人聞きが悪いことを。君が勝手に、わたしにこれでも食べろと押し付けて来たんじゃないか。返さないけど」

 まだ幾つか残っているレザンのトレイの上のケーキを見やる。体力おばけなだけあって、食欲も旺盛なんだよねコイツ。食事も身体造りの一環なんだそうで。

「ふっ、いいだろう」
「ぅわ、なんかムカつく」
「イライラには甘いものを食べると効くらしいからな。さあ、そこの男子生徒よ。俺がハウウェルの気を引いている今のうちに逃げるんだ」

 ビシッと食堂の出口を指すレザン。

 この野郎っ、わたしの言葉を信じてやがらねぇ!

 そして、いきなり無神経な強面野郎に逃げろと話し掛けられた彼が、目を白黒させて驚いている。その間に、このテーブル近辺から人がいなくなっていたりするし。

「わたしは誰彼噛み付く猛獣か」

 低く返すと、

「ハウウェルの条件反射じゃなかったのか? 急いで食べて、彼が出て来るのを待ち伏せして、裏へ引き摺って行って話し合う・・・・気だろう?」

 きょとんとした表情でとんでもねぇ誤解を与えることを言いやがったよっ!? 彼がぎょっとした顔でわたしを見ているよ!

「とんだ濡れ衣だな。一般人相手にそんなこと、誰がするか・・・とりあえず、そのチョコタルトも寄越せ?」
「ハウウェルは俺のケーキを幾つ強奪すれば気が済むんだ? 全く……」

 やれやれ、とでも言いたげな表情でチョコタルトの皿をわたしのトレイに置くのがまたムカつく!

「いや、今、明らかにお前が、わたしの気分を現在進行形で害してるからな。ケーキ二個くらいじゃあ割に合わないくらいには、気分が害されてんだよ」
「ふむ……さすがに、これ以上はやらんぞ?」

 目付きを鋭くして宣言するレザン。

「これ以上ケーキが入りそうじゃないのが残念だよ、全くもう……」

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