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しおりを挟む今回はちょいシリアス。
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「いや? なんでもないっ。そ、そんなことより、二人共週末はどうするんだ? 明日は金曜だろ」
露骨に話を逸らされた気がするけど、まぁいいか。
「ハウウェルも俺も、帰省だな」
「まぁ、そうだね」
「あ~、そうか。それは……その、なんか言われたりする、のか?」
テッドが声を潜め、心配そうに聞いた。
「いや? 俺は、今回のことを報告しろと兄貴に言われただけだからな。特に叱られたりはしないだろうな。ハウウェルの方はどうだ?」
「わたしの方も、別に叱られたりはないと思う。多分、セディ……兄上とおばあ様が心配してるみたいだから、顔を見せに帰るって感じかな?」
「そっか……よかった」
ほっとしたような溜め息が落ちた。
どうやら、心配されていたようだ。
「大丈夫だよ。でも、心配してくれてありがとう」
「っ……うおぉ、美人にお礼を言われたっ!」
バッと顔を手で覆って俯くテッド。
「・・・それは、茶化しているのかな?」
なんとも言えない反応だ。
「……いや、なんか声低くね? 別に茶化しちゃいねーって! つか、ハウウェルはさ、自分が美人だって自覚あんのかよっ!?」
不穏な空気でも感じとったのか、顔を上げるテッド。その頬がちょっと赤いような?
「? 美人、って・・・まぁ、わたしはおばあ様似だけど」
若い頃から美人だというおばあ様は、今もお綺麗だ。ということは・・・ふむ。客観視をしてみると、『わたしは、若い頃のおばあ様にそっくり』だ。ということは・・・逆説的には『わたしも、一般的には美人と言われる枠に当てはまる』というワケか。
「・・・成る程。わたしは、美人だったのか」
「ふむ。やっと自覚したのか」
「え? マジで気付いてなかったのかっ!?」
びっくり! という表情のテッドに、まじまじと見られた。
「? 女性ならまだしも、鏡を見て、『自分は美人だ』とか、『自分は美しい』って思っているような男がいたら、気持ち悪くない?」
それはナルシストというか・・・
「わたしはドン引くけど?」
「そ、それは確かに……いや、でも普通は……」
「ハウウェルは今まで、容姿で舐められることが多かったからな。無意識に認めたくなかったのだろう」
「ぅわ、レザンになんか偉そうなこと言われたっ!? 脳筋のクセに!」
「ふっ、『美人な男は大抵、その容姿が地雷になっているから自分で気付くまではそっと見守っておけ』と、兄貴達がそんな風なことを言っていたからな」
そう言って、からりと爽やかに笑うレザン。その視線が少し優しい気がして、なんだか気恥ずかしくなって目を逸らす。
「・・・ぁ~、うん。レザンの兄君達の言葉なら、なんか凄~く重たい気がする」
彼らは、軍人だ。
そしてわたしは――――「その顔で軍に入るなら、ハニートラップ要員やら諜報員にも行けそうだな」と、ニヤニヤと嗤う親切な先輩や同級生に、やたらと言われたし。
別に、軍が綺麗なところだとは思っていないし、汚いところもあると一応知っている。けど、それでも・・・色仕掛けしろと命令や強要されることが、わたしは嫌だ。
しかも、「愛されていない、可哀想な生い立ちの人間の方がそういう人員に向いているそうだぞ? よかったな」だとか、人を馬鹿にし過ぎだろう。
チッ・・・ああ、嫌なこと思い出した。
「どうかしたか? 目が荒んでるぞ、ハウウェル」
「いや、なんでもない」
「……そうか。では、後で乗馬をしに行くぞ!」
「え? まぁ、別にいいけど」
「それでは放課後だな!」
「じゃあ、後でなハウウェル」
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