129 / 673
111
しおりを挟む✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
翌朝。
筋肉痛の重怠さと、若干の睡眠不足を感じつつ、眠さを堪えて起きる。
ぼへ~っとしながら身支度を整え、食堂へ向かうと・・・
なにやらざわついている気がした。
ぼんやりしながら朝食を食べていると、
「やあ、おはようハウウェル!」
朝も昼も、深夜や早朝でも変わらぬテンションの挨拶。ちょっとウザいと思いつつ、
「……おはよう」
低い声で返す。と、
「ふっ、相変わらず朝が弱いなハウウェルは。そんなだと、朝に奇襲を掛けられたらあっさりやられてしまうぞ?」
なんか言っているが、聞き流して黙って朝食に取り掛かる。
わたしは別に、奇襲を掛けられるような殺伐とした暮らしをするつもりはさらさら無い。だから、朝がちょっとくらい得意じゃなくても大して構わない。
でも・・・レザンが現れた途端、なんだか食堂のざわつきが大きくなったような?
「うん? どうかしたか? ハウウェル」
「・・・君、なんかした?」
「? ああ、まだ寝惚けているのか。大方、昨日の先輩方のことだろう」
「きのう、昨日、先輩……ああ、思い出した。なに? もう噂回ってるの?」
昨日は確か、こっちに戻って来て、夕食を食べているときに面倒な輩に絡まれて、カツアゲを返り討ちにして、学園の職員に引き渡したんだったな。
取り調べが面倒だった。そして、もう既に彼らの顔も覚えていない気がする。
「うむ。どうやら彼らの悪さはそこそこ有名だったようだな」
「そう」
ああ、そうだ。今日も事情聴取があったんだったな。ぁ~、めんどい。
「そして、彼らの部屋が、昨夜のうちにガサ入れされたらしい」
「成る程」
それでこの騒ぎですか。頷いていると、
「大丈夫でしたか? ハウウェル君」
心配そうな声が掛けられた。
「おお、ライアン先輩ではないですか。おはようございます」
「あ、ああ。おはよう。そんなことより、君達は大丈夫でしたか? 下位貴族や平民を狙って金品をせびった上、学生証まで奪い取る輩がいたらしい。噂には聞いていたが、まさかこの寮の生徒だったとは・・・」
沈痛な面持ちでわたしとレザンを見詰めるライアンさんに、
「うむ。問題ありません。後で事情聴取に協力しますが、適切に処理してくれることでしょう」
レザンが応える。
「あ、ああ。そうですね」
「ええ。大丈夫です」
「よかった……もしネイサン様になにかあれば、セディック様に顔向けできないところでした」
深い安堵の溜め息を吐いているところへ、少し申し訳ない気持ちになりますが・・・
わたしがあの連中を突き出した当事者です。とは、若干言い難い雰囲気だな。まぁ、こんな誰が聞いているかわからない食堂で話すことじゃないけど。
「とりあえず、朝食食べません?」
と、話を濁しておこう。
21
お気に入りに追加
749
あなたにおすすめの小説

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる