126 / 673
108
しおりを挟む「まぁ、見ての通りだね」
「ふむ、成る程。いつものやつだなっ!?」
ぶっ倒れている先輩達を見下ろし、あっさり納得するレザン。
「そういうこと、かな?」
まぁ、大体いつもの通りだ。騎士学校で絡まれ捲っていた頃の……
「それにしても、ハウウェルに絡もうとするとは、見る目の無い連中だな。これだけ負けん気の強い奴もなかなかいないというのに」
「負けん気って……」
「うん? かなり強いだろう? だから、ハウウェルは、勝てなくても簡単に負けようとしないじゃないか。で、それはどうするんだ?」
わたしが数えている複数の学生証と財布とを見やるレザン。
「そうだねぇ……面倒だから、手伝ってよレザン」
「よし、では久々に付き合ってもらうぞ!」
ぁ、ちょっとこれ早まったかも。
「・・・まぁ、程々にね」
「よし! で、どうする?」
「先輩達が拳闘の訓練をしてやると言って因縁を付けて来た。で、そこにレザンが駆け付けて来て、自分が相手をすると言った。そして、拳闘の訓練をしている際に財布や学生証がぽろり。って感じかな?」
「こいつらを伸したのはハウウェルだろうに」
レザンが渋い顔をする。
「なんか信じてもらうまでめんどくさいから、君がやったことにしといて。で、落ちた学生証が違う人の学生証だったから寮監に届けて相談した、と」
「少々釈然としないが、概ねわかった。それで、先輩方はどうなる?」
「かなりよくて停学、そして被害者と示談。最悪だと、退学処分の後に逮捕とかされるんじゃない?」
「ふむ。自業自得と言ったところか」
「そういうことでよろしく」
「ハウウェルの方こそ、忘れるなよ?」
チッ、覚えてやがったか。
「・・・じゃあ、週末の放課後。木剣で。夕食までの時間なら・・・」
ぼそりと告げると、
「いいだろう。任せろ!」
にかっと爽やかに笑うレザン。
「はぁ・・・」
思わず出たのは、憂鬱な溜め息。
「うん? どうしたハウウェル」
レザンが面倒だから。というのもあるけど……
「・・・いや、取り調べ面倒だなって。もう部屋戻って寝るつもりだったから」
小一時間は覚悟かな? まぁ、レザンが打ち合わせ通りに証言してくれる予定だから、わたし一人で説明するよりもかなり短時間で済むと思うけど。
わたしが暴力沙汰に巻き込まれると、なぜか初見の大人はわたしの話をあんまり信じてくれないんだよねぇ。なんだろ? わたしはどうやら、大人しい子だと思われることが多いらしくて……「誰がやった?」と、しつこく聞かれて嫌になるんだよね。しかも、相手の記憶が無かったりする場合は特に。
まぁ、何度もお世話になった教官達には「またハウウェルか」と渋い顔をよくされましたけど。
ふぅ・・・こんなことなら、あと三個くらいパンを食べとけばよかったっ!!
15
お気に入りに追加
727
あなたにおすすめの小説
(完)私を捨てるですって? ウィンザー候爵家を立て直したのは私ですよ?
青空一夏
恋愛
私はエリザベート・ウィンザー侯爵夫人。愛する夫の事業が失敗して意気消沈している夫を支える為に奮闘したわ。
私は実は転生者。だから、前世の実家での知識をもとに頑張ってみたの。お陰で儲かる事業に立て直すことができた。
ところが夫は私に言ったわ。
「君の役目は終わったよ」って。
私は・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風ですが、日本と同じような食材あり。調味料も日本とほぼ似ているようなものあり。コメディのゆるふわ設定。
【完結】あなたの『番』は埋葬されました。
月白ヤトヒコ
恋愛
道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男にぐいっと強く腕を掴まれました。
「ああ、漸く見付けた。愛しい俺の番」
なにやら、どこぞの物語のようなことをのたまっています。正気で言っているのでしょうか?
「はあ? 勘違いではありませんか? 気のせいとか」
そうでなければ――――
「違うっ!? 俺が番を間違うワケがない! 君から漂って来るいい匂いがその証拠だっ!」
男は、わたしの言葉を強く否定します。
「匂い、ですか……それこそ、勘違いでは? ほら、誰かからの移り香という可能性もあります」
否定はしたのですが、男はわたしのことを『番』だと言って聞きません。
「番という素晴らしい存在を感知できない憐れな種族。しかし、俺の番となったからには、そのような憐れさとは無縁だ。これから、たっぷり愛し合おう」
「お断りします」
この男の愛など、わたしは必要としていません。
そう断っても、彼は聞いてくれません。
だから――――実験を、してみることにしました。
一月後。もう一度彼と会うと、彼はわたしのことを『番』だとは認識していないようでした。
「貴様っ、俺の番であることを偽っていたのかっ!?」
そう怒声を上げる彼へ、わたしは告げました。
「あなたの『番』は埋葬されました」、と。
設定はふわっと。
【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には
月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。
令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。
愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ――――
婚約は解消となった。
物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。
視点は、成金の商人視点。
設定はふわっと。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる