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しおりを挟む「嘆かわしい話だとは思わないか?」
大仰に残念がって見せているが、その表情には全く隠し切れていない愉悦が滲んでいる。
表情も取り繕えないとは。まだまだですねぇ。
ちなみに、わたしは同意もしていないし。
まぁ、見るからに相手にするのはめんどくさそうだ。それに、昨日の早朝にそんなことがあったとは知らなかったなぁ。うん。きっと、わたしが行った後のことに違いない。
「そうですか。それはまた、大変な思いをした方がいたようですね。無事に家まで帰れたのならいいのですけど・・・」
と、憂い顔を作って溜め息を吐き、
「では、わたしはこれで失礼」
空の器を手に立ち上がる。
変なのに絡まれるのは嫌だからさっさと部屋に戻りますか。う~ん、もう一個くらいパンを食べたかったなぁ。残念!
「待て!」
「お前、あれだろう? いつも、デカくて目付きの悪い一年と一緒にいる女顔の奴」
「今日はデカいのは見掛けないがな」
ニヤニヤと笑う彼ら。目付きの悪いデカい一年というのは、レザンのことかな? 確かに、奴は一年にしては身長百八十越えとデカい。
まぁ、今日はレザンの方がまだ帰っていないか、既に夕食を済ませているか(奴のことは特に興味も無いけど)で、久々に一人ごはんを堪能させてもらってたんだけど・・・『女顔の奴』呼ばわりは、ちょっとイラッと来るな。
「人違いでは?」
うん。わたしの他にも、所謂女性的な顔立ちと言われる顔をしている人はいる。
だから、わたしのことだとは限らない。
「少し顔を貸してもらおうか」
全く、人の話を聞かない奴だな?
わたしはこれから……部屋に戻って、今さっき食べ損ねたパンの代わりにお菓子を摘みながら、ごろごろまったりして、明日の準備をしてから眠るという大事な予定がびっしり詰まっているというのに。
こんな、見るからに輩のような連中に構っている暇は……ハッ! 今、食堂にいる他の生徒達にサッと目を逸らされた。
よもや、これが……この学園のはみ出し者と呼ばれる存在なのだろうか?
この先輩達がねぇ?
「・・・」
「聞いてるのかっ!?」
「お前が、あのデカい奴に虐められているのは知っている」
「大人しく付いて来いよ」
その誤解、まだ解けていなかったのか。
仕方ないなぁ。全く・・・
と、男子寮の裏手に連れて来られて――――
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