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しおりを挟むそんな経緯と理念を持っている学園なので、ハニートラップを仕掛ける場所としては、すこぶる向いてないんですよねぇ。
一応、数年ごとに通称『キス停学』の校則の見直しを求める声が学生間で上がるらしいけど・・・学園側の理念と主張の方が正しいですし、「なら、もっと校則の緩い学校へ転校を勧めます」と言われて終わるのだとか。
学校は学ぶ場所! というド正論を返されますからね。反論のしようもありませんよ。
校則も覆ることはなさそうだし、お堅い校風もそうそう変わることもないだろう。やっぱり、逃げ腰気味な塩対応で凌ぐしかないかな?
既成事実とやらを作ろうにも、それで退学させられるのは『彼女』も本意ではないだろうし。
それに、なんというかこう・・・ある意味では、外交問題に発展する可能性を孕んでいる『彼女』のことは、お祖父様やおばあ様には話せないよねぇ。
一応、自慢じゃないけど・・・騎士学校時代に脳筋共から追い掛けられて鍛えられた。それで、逃げるのも隠れるのもそこそこ得意になったからきっと大丈夫だろう。
脳筋共とは、また違う感じに常識がちょっとアレっぽいけど、『彼女』は女子生徒だし。
きっとそんな何時間も追い掛けて来るような体力も気力もないだろうから。そもそも『彼女』は三年生だ。気を付けていれば、普通に接触する機会自体が少ないだろう。
「うん。なんか、大丈夫な気がして来た」
「そっか。でも、本当に困ったらちゃんと言ってね? ああいう女性、苦手でしょ。ネイトは」
確かに。やっぱり人の話を聞かないような、母を思わせるような女性は、変わらず苦手だけど・・・
そうも言ってられないよねぇ・・・
あれだし。おばあ様曰く、「いいですか? 人の話をちゃんと聞けるような、理知的な女性ばかりがいるとは思わないことですよ」なのだそうなので。
母がアレなので、その辺りはもう、本当によ~くわかっていますとも。身に染みて。
とはいえ、世にはああいった女性ばかりではないことも、わたしはちゃんと知っています。
わたしとセディーは、そういう方々のお陰で、こうして一緒に過ごせるようになったんですから。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。わたしはもう、小さくないんだから」
「小さくないから、心配でもあるんだよ?」
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