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「ただいま」
「ふふっ、お部屋は整えておきましたが、あまり夜更かしはいけませんよ」

 と、イタズラっぽく注意されてしまった。

「はい、気を付けます」
「セディック様も、朝に弱いんですよ。ネイサン様よりも寝起きが宜しくないんですよ」
「うん」
「ご兄弟ですね」

 微笑ましいというような優しい眼差し。

「そうだねぇ」
「ネイサン様が楽しそうで、なによりです」

 昔は、わたしの方が彼女を見上げていたのに。いつの間にか、下になってしまった彼女の目線がわたしを見上げている。温かいなと感じる柔らかい視線。

「ありがとう」
「では、失礼しますね」
「うん」

 彼女と別れて部屋に入ると、少ししてからセディーがやって来た。

「少し話さない? ネイトが疲れてなければ、だけど」
「いいよ」

 と、セディーを手招き。二人並んでベッドに座る。

「楽しかったね。セディーは?」
「うん。僕も楽しかったよ。みんなで遊ぶのなんて、随分と久し振りじゃないかな」
「そうだねぇ。お祖父様が……なんだか、前よりも大人げないような気がしたけど」
「お祖父様って、案外負けず嫌いなとこがあるからね。今日は、かなり本気だったんじゃない?」

 もう手加減は必要ないと思ったのか、それとも・・・セディーに勝てなくなって来ているから、わたしには負けたくなかった、だとか?

 まぁ、どっちにしろ、これからお祖父様は本気でわたしと遊んでくれるということだろう。それはそれでお祖父様に認められたような気がして、少し嬉しいかもしれない。

「学園はどう? なにか困ってることはない?」

 ぽつんと、セディーが聞いた。

 困っていること、か・・・

「どう言えばいいのか……なんというかこう、形容し難い女子生徒がいる、かな?」
「あぁ、あの二年の……いや、学年が上がってる筈だから、もう三年生か……の、女子生徒のことだったりする? 男子生徒に無闇やたらと粉掛け捲ってる彼女」

 なんというか、『形容し難い女子生徒』であっさり通じちゃうってことは、やっぱりセディーがいた頃から有名だったんだ、彼女。それも、かなり悪い意味で・・・

「まぁ、多分その女子生徒、かな? 今朝、馬車に乗る前に彼女に捕まっちゃってさ」
「ぁ~……それはなんというか、運が悪かったね」

 ぽんぽんと優しく頭が撫でられた。セディーはお祖父様と違って、わたしの髪をぐしゃぐしゃにはしない。まぁ、髪を直すのは面倒だけど、わしゃわしゃと撫でられるのも、あれはあれで嫌いじゃないけどね。

「彼女って、裕福な平民のお嬢さんだって聞いたけど、なんであんなにやりたい放題なの?」

__________


 感想まで読んでくれている方はご存知かもしれませんが、『彼女』の名前が出て来ないのは、特に深い意味も伏線などもありません。

 ただ単に、まだ『彼女』の名前が決まっていないからです。(爆)

 名前は、決まったら多分出て来ます、よ? 多分、ですけど……

 まぁ、『カラフル*レイヴン♪』という別作品で、何度も出て来たキャラの名前を最後の最後まで名前を出さないで、『ごろつき未満A』呼ばわりさせていたので、名前が出ないままフェイドアウトする可能性もありますが。

 奴も、単に最後までずっと名前が決まらなかっただけです。
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