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しおりを挟む「っ……僕と、一緒に、いてくれる?」
さっきの、「勉強を見てあげる」と言ったのとは全然違って、どこか自信がなさそうに、ぽつりとわたしを伺うようなおどおどした声。
「うん。セディーがいいなら、だけど」
「ほら、最初から素直に言えばよかったでしょ?」
おばあ様が得意げに言う。
「・・・はい」
やっぱり、おばあ様は強いですね。さすがです。
「ネヴィラ、セディー! わたしを除け者にしてネイトと三人だけでお茶会とは何事だ!」
またしてもバタバタと足音がして、今度は低く渋い声が響きました。
「あら、お帰りなさいあなた」
「お帰りなさい、お祖父様」
「ただいま。いや、それよりネヴィラ、わたしを除け者にするのは酷いではないか」
むすっとした顔でおばあ様とセディーに文句を言い、わたしへ向き直るお祖父様。
「帰って来たようだな、ネイト」
「はい、ただいまです。お祖父様」
目を細めながら、わしゃわしゃと頭を撫でるお祖父様に挨拶を返します。
「ハハハっ、髪がぐしゃぐしゃになってしまったな。すまんすまん」
懐かしい感覚ですね。
騎士学校で外泊許可をもぎ取ってこっちに帰って来たときにも、こんな風にお祖父様は慌ただしく帰って来て、できるだけ長くわたしと過ごそうとしてくれたんですよね。
頭も、結構な頻度でぐしゃぐしゃにされますが。
「いえ」
すまんとは言っていますが、お祖父様が悪びれもしないのもいつものことなので、髪紐を解いて手櫛で整えてまた結び直します。
ぶっちゃけお祖父様って、わたしの顔がかなり好きみたいなんですよねぇ。わたし、おばあ様の若い頃にそっくりらしいので。
ちなみに、お祖父様とおばあ様はある意味、恋愛結婚らしいです。
それは、今から数十年前。お祖父様がまだ十代の少年だった頃のこと。
__________
お祖父様登場。ですが、お祖父様とおばあ様の馴れ初めは長くなったので次回。
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