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 着くまで少し、寝ていようかな?

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

 コンコンとなにかを叩く音がして――――

「……ト、寝てるの? ネイト」

 優しい声に名前を呼ばれ、

「起きて、もう着いてるよ。ネイト」

 ゆさゆさと肩を揺すられた。

「……ん、起きて……る……」
「ふふっ、それはまだ寝てるって言うんだよ。ほら、起きて。寝るならちゃんと家の中で寝よう? ね、ネイト」

 クスクスと笑いながらわたしを呼ぶ声にうんうんと頷いて、ぼんやりした頭で目を開く。

「・・・せ、でぃ?」

 覗き込むのは、ブラウンの瞳。

「ああ、起きた? おはよう、ネイトも僕と一緒で朝に弱いんだねぇ。ほら、早く出よう?」

 なんでセディーが? と思うと、にっこりと柔らかい笑顔で差し出される滑らかな手。

「・・・出る?」

 回らない頭で、セディーの手を掴む。

「うん。折角せっかく、初帰省で家に着いたのに、ネイトはずっと馬車の中にいるつもりなの? それはすっごく勿体無いと思うんだけどな?」

 初帰省、家に着いた、馬車の中、勿体無もったいない・・・?

「ぁ~、そう、だ……帰って来たんだ。……ただいま、セディー」

 思い出した。そうだ。わたし、学園から祖父母の家に帰って来たんだった。

「うん、お帰りなさい。ネイト」

 にこにことご機嫌なセディーに手を引かれて、馬車を降りる。

「早起きはやっぱり大変だった? 長いこと馬車に乗ってるのも疲れるもんね。僕も、よく馬車で寝ちゃってたなぁ。腰とか痛くない? 朝ごはんはもう食べた?」

 矢継ぎ早な質問。

「そうだね、早起きは少し大変だったかな? 腰も、大丈夫。痛くない」
「もっとゆっくりの時間でもよかったんだよ?」
「いや、ゆっくりすると面倒なのに捕まりそうだったから……今日は朝早くから出て来たんだ」

 レザンに捕まりたくないからと、眠いのを我慢して早くっから寮を出たというのに。朝っぱらから例の女子生徒あんなのに絡まれるとは……って感じだよ。全く。

 まぁ、彼女はちょ~っとばかりお話をしただけで簡単に諦めてくれたから、脳筋共に追い掛けられて、必死こいて逃げるのよりは大分楽だったけど。

 精神的には、少し疲れたかな?

「そうなの?」
「うん。ごはんは、まだ食べてない」
「それはお腹空いたでしょ。寝る前に、ちゃんとなにか食べた方がいいよ」
「うん、そうする」

 と、少し遅めの朝ごはんをセディーと一緒に食べて、お風呂で汗を流して――――

 眠気に勝てなくてベッドに転がり、寝た。
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