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しおりを挟む「すみません、副部長! それでは失礼」
と、名乗りもしない不躾な女子生徒から逃げ、わたしを呼んでくれた副部長の方へ向かう。
まぁ、乗馬クラブは基本、参加は自由なのでこんな風に呼び付けられることは無いそうなんですが。
「呼び出しありがとうございます、セルビア嬢。助かりました」
わたしを呼んだ声の主にお礼を言うと、
「いえ、お困りのようでしたので。ですが……まだこちらを見ていますね、彼女。差し出がましいかと思いますが、もう少しお話でもしていた方がいいかもしれません。勿論、ハウウェル様が宜しければ、ですけど」
相変わらずのキリっとした表情。それでいて、気遣いが利いています。
「差し出がましいなんてとんでもないです。・・・では、セルビア嬢。あの方は、乗馬クラブには?」
乗馬クラブの部員なら、今後も馬場で絡まれる可能性がある。その場合は、早朝に時間をずらして馬に乗るしかない。
まぁ、騎士学校は偶に朝の四時とか五時くらいから、抜き打ちの早朝訓練とかあったし。実は、今もあんまり朝は得意じゃないけど、七時くらいならまだなんとか・・・イケる、かな? ああ、でも馬に乗っていられる時間は短くなりそうだなぁ。
「大丈夫ですよ。彼女は部員ではありませんので」
「そうですか。それは助かります」
朝にバタバタするのは、やっぱり大変そうだし。放課後にはゆっくりと乗馬ができる。
「ええ。ですが・・・ハウウェル様は、彼女には気を付けた方が宜しいかと」
セルビア嬢の表情が曇ります。
「そうですね。失礼ですが、セルビア嬢は彼女とはお知り合いで?」
「知り合い、と言いますか・・・彼女はある意味有名ではありますね」
この口振りからすると、十中八九は良くない意味での有名なんだろうなぁ。まぁ、あの不躾さからして、お察しという感じではあるけど。
「あの方は高等部三年生の、裕福な平民の方なのですが・・・」
セルビア嬢の口が重いですね。
「貴族の嫡男の方々に、よく声を掛けている方です。どうも彼女は婚約者がいないらしく、学園で良い縁を探している、とのことですね」
「それはまた・・・」
なんとも言えないな。
貴族に嫁入りしようと奮闘している、と取れなくもない。非常に好意的な見方をすれば、だけど。身も蓋も無い言い方をすれば、節操無しと言ったところだろうか? おそらく、まともに相手する貴族子息は少ないだろうなぁ。
う~ん……財政の厳しい貴族家なら、嫁入りを考えるくらいでしょうか? でも、あの不躾な態度と、嫡男であれば婚約者がいようがいまいが、それこそ誰彼構わず声を掛けているというのなら、それも厳しいかもしれませんね。
とりあえず、わたし的にはアレは無しですけど。どこぞの物好きなら、ワンチャンあるんじゃないですかね? 顔はそれなりでしたし。
まぁ、スピカの方が数百倍は可愛いけどねっ!
「それと、これはあくまで噂なのですが……」
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