虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 これって、もしかして・・・?

「なぁ、ハウウェル」

 ぱちぱちと瞬いてわたしを見下ろすレザン。

「なに? レザン」

 ちなみに、レザンはわたしをファミリーネームで呼ぶけど、わたしは彼を名前で呼ぶ。
 なんでも、彼の上の兄弟もあの騎士学校を卒業した先輩で、クロフト呼びだと兄弟の誰を差しているのか紛らわしいから名前で呼んでほしい、とのこと。

「これは……もしかすると、俺がお前を虐めていると思われているのだろうか?」
「もしかすると、そうかもしれないね」

 はなはだ不本意ではあるけど。おそらくは、長身の強面男子に無理矢理連れ回されている男子生徒、という風に見られているのかもしれない。

「君っ、そんなことをハウウェル君に聞くのはやめたまえ! 脅して言いなりにさせるのはやめろ!」

 端から見れば、それはもう、虐めている側が「違うよな?」と、虐められている子に圧力を掛けているように見えることだろうし。
 騎士学校では、よく見た光景でもある。

 まぁ、レザンに迷惑しているのは事実だが、わたしは彼に虐められているワケではない。振り回されて、かなり迷惑はしているが。

 どうやら先輩は、わたしが困っていると思って、レザンを注意しに来てくれたらしい。かなりいい人のようだ。

 確かに、困ってはいるんだけどね?

 どう誤解を解こうかと思っていたら・・・

「……ぷっ、ハハハハハハっ!」

 と、レザンがいきなり笑い出す。

「な、なにがおかしいっ!?」

 レザンに怯えつつも、ムッとする先輩。

「ぃ……いや、ハウウェルを、いじめられっ子と、勘違い……するだなんてっ……ぷっ!」

 レザンがぷるぷると震え出す。いや、全く笑いを堪え切れていないんだけどね。

「くくっ……失礼、先輩。コイツは……ハウウェルと俺は、この間卒業した騎士学校の同期です。しかも、コイツは、騎士学校時代には、絡んで来た連中を片っ端から撃退していたので、素直に虐められるようなタマじゃないですよ。むしろ、集団で絡んで来た連中が、血相変えて逃げ出すまでやり返すような奴ですから」

 ニヤニヤと笑うレザンに、

「え? その顔で?」

 ぽかんと驚く先輩。

「ええ、この顔で、です」

 この顔で、ってどういう意味なんだか? なんかこう、バカにされているような気がする。

「しかもコイツ、剣の授業で主席だった俺と打ち合いができるくらいに強いんで。心配は無用です」

 いや、君が主席だったのは剣だけじゃないでしょ。しかも、三年間総合で主席独占だったし。座学は、十位くらいだったみたいだけど。

「・・・君と?」
「ええ。俺と、です」

 レザンの言葉に、わたしを見下ろしたりレザンを見上げたりと、交互にわたし達を見比べる先輩。

「ほんとう、なのか? ハウウェルくん」

__________

 身長は、ネイサン<先輩<レザンの順です。

 ネイサンは167㎝くらい。
 レザンが183㎝くらい。

 先輩はその間くらい。
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