82 / 673
65
しおりを挟むこれって、もしかして・・・?
「なぁ、ハウウェル」
ぱちぱちと瞬いてわたしを見下ろすレザン。
「なに? レザン」
ちなみに、レザンはわたしをファミリーネームで呼ぶけど、わたしは彼を名前で呼ぶ。
なんでも、彼の上の兄弟もあの騎士学校を卒業した先輩で、クロフト呼びだと兄弟の誰を差しているのか紛らわしいから名前で呼んでほしい、とのこと。
「これは……もしかすると、俺がお前を虐めていると思われているのだろうか?」
「もしかすると、そうかもしれないね」
甚だ不本意ではあるけど。おそらくは、長身の強面男子に無理矢理連れ回されている男子生徒、という風に見られているのかもしれない。
「君っ、そんなことをハウウェル君に聞くのはやめたまえ! 脅して言いなりにさせるのはやめろ!」
端から見れば、それはもう、虐めている側が「違うよな?」と、虐められている子に圧力を掛けているように見えることだろうし。
騎士学校では、よく見た光景でもある。
まぁ、レザンに迷惑しているのは事実だが、わたしは彼に虐められているワケではない。振り回されて、かなり迷惑はしているが。
どうやら先輩は、わたしが困っていると思って、レザンを注意しに来てくれたらしい。かなりいい人のようだ。
確かに、困ってはいるんだけどね?
どう誤解を解こうかと思っていたら・・・
「……ぷっ、ハハハハハハっ!」
と、レザンがいきなり笑い出す。
「な、なにがおかしいっ!?」
レザンに怯えつつも、ムッとする先輩。
「ぃ……いや、ハウウェルを、いじめられっ子と、勘違い……するだなんてっ……ぷっ!」
レザンがぷるぷると震え出す。いや、全く笑いを堪え切れていないんだけどね。
「くくっ……失礼、先輩。コイツは……ハウウェルと俺は、この間卒業した騎士学校の同期です。しかも、コイツは、騎士学校時代には、絡んで来た連中を片っ端から撃退していたので、素直に虐められるようなタマじゃないですよ。むしろ、集団で絡んで来た連中が、血相変えて逃げ出すまでやり返すような奴ですから」
ニヤニヤと笑うレザンに、
「え? その顔で?」
ぽかんと驚く先輩。
「ええ、この顔で、です」
この顔で、ってどういう意味なんだか? なんかこう、バカにされているような気がする。
「しかもコイツ、剣の授業で主席だった俺と打ち合いができるくらいに強いんで。心配は無用です」
いや、君が主席だったのは剣だけじゃないでしょ。しかも、三年間総合で主席独占だったし。座学は、十位くらいだったみたいだけど。
「・・・君と?」
「ええ。俺と、です」
レザンの言葉に、わたしを見下ろしたりレザンを見上げたりと、交互にわたし達を見比べる先輩。
「ほんとう、なのか? ハウウェルくん」
__________
身長は、ネイサン<先輩<レザンの順です。
ネイサンは167㎝くらい。
レザンが183㎝くらい。
先輩はその間くらい。
27
お気に入りに追加
745
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
高慢な王族なんてごめんです! 自分の道は自分で切り開きますからお気遣いなく。
柊
恋愛
よくある断罪に「婚約でしたら、一週間程前にそちらの有責で破棄されている筈ですが……」と返した公爵令嬢ヴィクトワール・シエル。
婚約者「だった」シレンス国の第一王子であるアルベール・コルニアックは困惑するが……。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる