上 下
81 / 673

64

しおりを挟む

 最近、なんだか浮いているような気がします。

 なんでしょうね? 様子を窺われているような感じがして……微妙に視線が気になります。

 まぁ多分、様子を窺われているのは十中八九、レザンのせいなんだと思うけど。

 気の毒そうな視線、に近いのかもしない。

 実際、アイツに絡まれるのは面倒なんだけど。

 そう、思っていたら―――― 

 ある日の放課後。

「そう言えば、知っているか? ハウウェル」

 そんなことを言って、相変わらずわたしに絡んで来るレザン。

「・・・なにを?」
「この学校には乗馬クラブがあるらしい」
「へぇ・・・それは知らなかったな」
「乗馬クラブに籍を置けば、いつでも馬に乗れるぞ。ハウウェルは馬が好きだっただろう? というワケで、一緒に入らないか?」

 好きなときに馬に乗れるというのは、確かにとても魅力的だ。

 偶に、無性に馬に乗りたくなるときがある。

 騎士学校では乗馬の授業があったけど、この学園には乗馬の授業は無いみたいだし。休日にお祖父様の家の馬に乗るまで、我慢するしかないと思っていた。

 魅力的ではある。但し、レザンが付いて来るのは・・・若干の悩みどころだ。

 勝負とか吹っ掛けられるのも面倒だ。

 あ、でも逆に。乗馬クラブに入れば、レザンにわたし以外の友人ができるかもしれない。そう考えると、なかなかいいことではないだろうか?

「どうだ? ハウウェル」
「いいよ。但し、君はわたし以外の友人を作ること。お父上からの命令なんでしょ?」

 これで、わたしにかまける時間が減るだろう。

「ふむ、成る程。ハウウェル以外のライバルを作れということだな!」
「あ~・・・うん。なんかもう、それでいいよ」
「よし、では早速行くとしようじゃないか!」

 とレザンに引っ張られていたら、

「ま、待ちたまえ、君達っ!」

 少し上ずった声で、意を決したような顔をした先輩に呼び止められた。この人は確か……セディーの後輩だと紹介された人だ。

 なんだかとても緊張しているようだけど?

「うん? なんでしょうか?」

 先輩を見下ろしながら先に口を開いたレザンに、

「ち、近頃、君はよくハウウェル君を連れ回しているようだが……い、嫌がっている人を無理矢理連れ回すのは、よくないと思うぞ!」

 若干顔色を失くしながら言う先輩。

「・・・無理矢理、だっただろうか? ハウウェル」

 きょとんと首を傾げるレザン。うん、わかってた。コイツが無自覚なのは。

「まぁ、君はいつも強引だからね。もっと人の話を聞くべきだと、いつも・・・思っているよ」
「成る程、留意しよう」
「うん。ちゃんと留意して」
「わ、わかったというのならっ、すぐにハウウェル君を放したまえっ!」

 これって、もしかして・・・?
しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

高慢な王族なんてごめんです! 自分の道は自分で切り開きますからお気遣いなく。

恋愛
よくある断罪に「婚約でしたら、一週間程前にそちらの有責で破棄されている筈ですが……」と返した公爵令嬢ヴィクトワール・シエル。 婚約者「だった」シレンス国の第一王子であるアルベール・コルニアックは困惑するが……。 ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

【完結】本当の悪役令嬢とは

仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。 甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。 『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も 公爵家の本気というものを。 ※HOT最高1位!ありがとうございます!

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

濡れ衣を着せられた挙げ句に婚約破棄された子爵令嬢、ブチ切れて壮絶な復讐劇を開幕させてしまう

ネコ
恋愛
子爵令嬢のマリエは、ある社交界にて、婚約相手である伯爵令息・ニックスの不貞現場を目撃してしまう。 しかも、相手はマリエが友人だと思っていた男爵令嬢のリリーである。 必死に弁明をするニックスとリリーに対し、マリエは「見なかったことにするから縁を切るように」と大人な対応を見せる。 しかし翌日、状況は一変。 なぜかマリエが不貞行為を働いていたという偽情報が広まっていたのだ。 もちろん情報の発信源はニックスとリリー。 二人はマリエを悪者に仕立てることで、自分たちの不貞行為を隠蔽しようとしたのだ。 マリエは釈明するが、悲しいことに証拠がなくて受け入れてもらえず。 ニックスに「不貞行為をする女などいらぬ」と婚約破棄を宣言されて名誉もズタボロ。 だが、マリエは「分かりました」と納得する女ではなかった。 子爵領に戻ったマリエは、父に事情を説明し、復讐したいと訴える。 彼女の言い分を信じた父は、「自由に暴れなさい」と家督を彼女に譲る。 こうして子爵となったマリエは、子爵としての権力をいかんなく発揮して復讐を始める。

[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します

シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。 両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。 その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。

番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ

紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか? 何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。 12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。 なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

処理中です...