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しおりを挟むレザン・クロフトと再会して三日目の放課後。
あれから毎日絡まれて――――
なんだか、わたしまで男子達から遠巻きにされている気がします。
気のせいだと思いたいけど・・・
「やあ、ハウウェル!」
元気よくレザンが歩いて来ると、さっと人垣が割れるんだよねぇ・・・
「はぁ~~」
「どうした? 溜息なんか吐いて。疲れているのか? ハウウェル」
「・・・君といると、わたしまで遠巻きにされている気がする」
「そうか? 騎士学校でもこんな感じだったと思うが? 大して変わらんだろう」
そうだろうね。レザンといるときには、コイツと似たような脳筋共しか近付かなかったからね。
実技の成績優秀者達(座学が残念な奴も含む)は、強かったからね。友人じゃない人や揉めたくない人は、みんな避けていたんだよっ!!
だから、わたしの方がレザン達を避けていたんだ。だって、事あるごとに勝負を挑まれるんだもん。面倒くさいじゃないか。
あと、他人から避けられるのと、自分から他人を避けるのとでは、かなり違うと思うんだよねぇ。色々と。
多分コイツは、気付いてなさそうだけど。
「・・・この状況って、君的にはマズいんじゃないの? お父上からの命令なんでしょ、人脈作り」
「ハハハっ、まぁまぁ困っているな」
困っていると言う割には、そうでもなさそうな爽やかな笑顔。
「笑っている場合?」
「当てにしているぞ、ハウウェル!」
他力本願かよ。
「いや、わたしを当てにしちゃ駄目でしょ。自分で頑張りなよ」
「ふっ、どうやら人には、向き不向きというものがあるらしい。剣を交わさずして、どう他人と仲良くなれるというんだ?」
「・・・君、それ本気で言ってる?」
「うん?」
きょとんと首を傾げるレザン。
代々軍人の家系……というか、脳筋であることの弊害なのかもしれない。
「会話があるだろう、会話」
わたしを巻き込まないでほしい。
「ほう、成る程。それで、会話とは一体、なにを話せばいいんだ?」
「わたしに聞くな」
「それは困ったな、ハハハっ」
全く困っているようには見えない。
「そんなことより、ハウウェル。久々にやらないか?」
「やりたくない」
「遠慮することはない。知っているんだぞ? ハウウェルが一人、男子寮の裏手で剣を振っていることは。水臭いじゃないか。丁度俺も、相手がほしかったところだからな!」
「いや、わたしは」
「さあ、行くぞ!」
と、レザンに引き摺られて男子寮の裏手まで連れて行かれた。
相変わらず、人の話を聞かない奴だ。そして、がっちり掴まれて逃げられない。
「あ、しまった! 剣を持っていない!」
「それじゃあ、わたしはこれで」
それなら、と逃げようとしたが……
「仕方ないな、今日のところは格闘にしておこうじゃないか! 行くぞ、ハウウェル!」
と、掴まれていた腕が放されたと思ったら、レザンの拳が迫って来た。
「っ!? ああ、もうっ!」
当たりたくないので、当然避ける。すると、
「そう来なくてはな!」
レザンが嬉しそうな顔で向かって来る。獰猛な笑みを浮かべて。
それから――――夕食の時間まで、レザンとど突き合いをさせられた。
「ハハハハハハっ!? 楽しいな、ハウウェル!」
「は? こっちは、全く楽しくねぇんだけど?」
「あれだな? 前から思っていたが、ハウウェルはヤケクソになって、口が悪くなってからが、手応えが出るな!」
「放っとけ。つか、もう食堂行かないと、夕食食いっぱぐれんぞ」
「なんだとっ!? 飯抜きはキツい! 行くぞハウウェル!」
と、二人で男子寮の食堂までダッシュした。
久々の格闘で、打撲を幾つか作った。
翌日は、筋肉痛と打撲であちこち痛かった。
レザンが上機嫌で絡んで来たのには、腹が立った。
どうやらレザンは、相変わらずぼっちのようだった。
誰か、レザンと友達になってくれないかな? 仲良くすると洩れなく、格闘やら剣の打ち合いが付いて来るけど。
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