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しおりを挟む「はぁ~~・・・それで、なんで君がここに? レザン・クロフト」
足を止め、荒くなった呼吸を調えながら、涼しい顔をした脳筋野郎を見上げる。体力おばけめ。
「うん? ランニングはもう終わりか?」
「はいはい、終わり終わり。で、なんでここに?」
もっと走ろうじゃないか! と爽やかな笑顔で言われる前に、適当に返事を返す。
まさか、あの騎士学校の知り合いが、この学園に入学しているとは思いもしなかったよ。
「まぁ、要は人脈作りだな。軍閥以外にも知り合いは作っておけとの父からの命令だ」
レザン・クロフトは、先祖代々軍閥の家系の三男。長男次男が優秀で頭も切れる人達なんだそうで、「俺は考えるのが苦手だからな!」と言って豪快に笑うような脳筋野郎。
まぁ、悪い奴じゃない。正々堂々とした性格の奴なんだけど、考え無しの困った脳筋でもある。
学年主席のコイツがやたらわたしに絡んで来たせいで、実技の成績優秀者達(座学が残念な奴も含む)に目を付けられたし。
コイツの他、実技の成績優秀者達が絡んで来たせいというか、そのお陰? というか……で、集団で囲んで来るような質の悪い連中に絡まれることがかなり減ったのは事実だけど。
むしろ、体力的には実技成績優秀者達に絡まれる方がキツかったんだよなぁ。
有象無象な雑魚共に絡まれても、あんまり怪我とかしなかったのに。
脳筋共に絡まれると、打撲とか擦り傷、捻挫なんかが増えるんだよ。あと、筋肉痛とかもさ。
だから……なんというかこう、コイツがわたしの平穏を乱す奴であることも確かだ。
「あ~そうですか」
「うむ。知り合いがいて心強いぞ! 近頃、なぜか遠巻きにされていてな」
ちょっと困ったような顔のレザンに……
ふと、どこぞの普通クラスで喧嘩があったという話を、思い出した。
「ぁ~、君。もしかして喧嘩とかした?」
「いや? 喧嘩なんぞしていないぞ? 歩いていたら、やたら男子生徒にぶつかられてな。相手が勝手に転んだだけだ。その後、怪我をしていないかと聞いたら、何故か家名を聞かれてな。クロフトと名乗ったら、血相を変えて謝られてしまった」
マジかっ!? だよね。幾らコイツの実力を知らないとは言え……うん、多分それわざとぶつかられたんだと思うよ?
きっと、ぶつかってみたはいいけど、レザンがびくともしなくて、ぶつかった連中の方が転んじゃったんだね。
助走を付けた上で、背後から思いっきり体当たりくらいしないと、簡単にはよろめきもしないような奴だし。
バッキバキだよ? コイツの身体は。ひょろっちい貴族の坊ちゃん達じゃ、幾ら束になったところで、勝てる筈がないんだけどね。
というか……体格が良くて長身、更には若干目付きの悪い、顔のいい強面という感じの見た目したコイツに喧嘩売るような馬鹿がいたとはっ!! だよ?
しかも、家名聞いて逃げ出すとかさ……それは合ってるよ? うん。けど、クロフト家は軍人の家系だからなぁ。
普通の貴族が揉めると、損しかない相手だ。
軍関係者か王族、それに近しい上位貴族の人以外が絡もうと思うこと自体、大いに間違っている。
「それ以来、担当教官にも遠巻きにされている気がしてな? 正直言うと、ハウウェルがいて助かったぞ。これからもよろしく頼む」
わたしの、平穏な日々が・・・っ!?!?
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